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特集

異国情緒あふれる天平の至宝「第69回 正倉院展」に行こう!

掲載日:2017年10月3日

木々が色づき、奈良の秋が深まれば、いよいよ「正倉院展」の季節です。整理済みのものだけでも9千件を超えるという正倉院宝物(ほうもつ)。今年はどんな素晴らしい宝物との出会いが待っているでしょうか。ひと足早く「第69回正倉院展」の見どころを紹介します!

世界に誇る「正倉院宝物」とは?

シルクロードの終着点といわれる奈良。奈良時代にはすでに国際交流が盛んで、異国の文化や文物が遣唐使などによってたくさんもたらされました。その刺激を受けて高級素材を用い、技の限りをつくした異国情緒あふれる工芸品や美術品、調度品、仏具、楽器などが国内でも作られました。正倉院にはこれらのほか、租税帳などの文書類、文具、染料、薬など、膨大な点数の品々が収められ、整理された宝物だけでも9千件を超えています。

この宝物のはじまりとなったのは、天平勝宝八歳(てんぴょうしょうほうはっさい)(756年)の聖武天皇の七七忌に、光明皇后が天皇の冥福を祈って大仏に献上した天皇ゆかりの品々です。その後、時を経て、宝庫は3つに仕切られ、北倉にはおもに聖武天皇ゆかりの品々、中倉には東大寺に献納された品々や文書、南倉には仏具や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)などの東大寺の儀式に関わる品々が納められました。1200年もの昔から大切に継承された宝物群は世界にも類がなく、まさに世界の至宝ともいえるのです。

そもそも正倉院ってどんなところ?

学校できっと一度は習う「正倉院」、実際にご覧になったことはありますか?正倉院は東大寺大仏殿の北西、約300mのところにあります。国宝に指定されている「正倉院正倉」は南北約33m、高さ約14m、総ヒノキの高床式校倉造(あぜくらづくり)の倉庫で、8世紀中頃に建てられました。かつては「校倉造の木材が呼吸して通気性がよかったために宝物が守られた」という説が信じられていましたが、実際には、宝物は辛櫃(からびつ)と呼ばれる櫃に収められたために適度な温湿度調整がなされ、今に伝わったというのが正しいようです。現在宝物は、正倉に近い鉄筋コンクリートの東宝庫・西宝庫で管理されており、正倉には櫃などが納められています。

正倉院は1つだけじゃなかった?

ところで「正倉院」の本当の名前は「正倉院正倉」といいます。奈良~平安時代、日本各地の役所や大きなお寺には、大事なものを収める「正倉」と呼ばれる倉庫が置かれ、正倉がたくさん建ち並ぶ一画を「正倉院」と呼びました。つまり正倉院は、かつては一般名詞だったのです。しかし時代が下るにしたがって数が減り、最後にたった1棟、東大寺の「正倉院正倉」だけが残りました。そのため今では「正倉院」と言えば、東大寺の正倉院正倉だった建物を指す固有名詞となっています。

校倉造の「正倉院」も見に行こう!

正倉院正倉は外から見学できます。正倉院展と宝庫を見て、正倉院をコンプリートしよう!
(申し込み手続き不要、見学無料)

公開日

月曜日~金曜日
(土曜日・日曜日・祝日・休日・12/28~1/4・その他行事開催日以外)
ただし、正倉院展の会期中は毎日

場所

東大寺大仏殿から北へ300m

開館時間

10:00~15:00

今年絶対見ておきたい正倉院宝物セレクション!

縁起のいい文様がいっぱい!
槃龍背八角鏡(ばんりゅうはいのはっかくきょう)

北倉42、径31.7㎝、縁の厚さ0.9㎝、重さ4260g

『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に載る聖武天皇ゆかりの鏡。成分分析によって、唐で作られた鏡だと考えられています。鏡に表された図柄はまるで仙人の住む仙境のよう。中央のつまみはハスの葉に乗る亀をかたどり、高い山の麓にオシドリが遊び、雲が湧く空には2匹の龍が絡み合います。龍がこのように絡み合う図柄は珍しいものです。鋳造の仕上がりも滑らかで美しく、外周を八卦文と山岳文が規則正しく並ぶ吉祥文様いっぱいの鏡です。

羊や猿、鹿も遊ぶ天上の楽園
羊木臈纈屛風(ひつじきろうけちのびょうぶ)

北倉44、縦163.1㎝、横55.9㎝、本地縦154.6㎝、本地横52.4㎝

聖武天皇ゆかりの屛風。ろうを絹地に塗り、その部分が染まらないようにする「ろうけつ染め」の技法を用いています。巻き角の羊や、樹の下に動物を置くスタイルはササン朝ペルシア風。一方、手前の山や木に遊ぶ猿などは中国風、絹地は日本製であることから、唐で作られた作品をお手本に日本で作られたものと考えられています。本来の地色はオレンジ系の華やかな色で、手彩色で染めた葉や猿が鮮やかに映えます。まるで天上の楽園のようです。

麗しき竪琴の調べが聴こえてくる
漆槽箜篌(うるしそうのくご)

南倉73、現存する槽の長さ139.0㎝、肘木の長さ79.0㎝

琵琶や笛などたくさんの楽器も伝える正倉院。なかでも箜篌は、メソポタミア北部のアッシリアに起源をもつ竪形(たてがた)のハープの一種。中国、朝鮮半島、日本でも用いられましたが、すでに中世には途絶え、正倉院の宝物の中にのみ生きている幻の楽器です。特に共鳴胴となる槽の部分の装飾は、革を貼ったり色を塗ったり多くの技法を駆使した丁寧な仕上がり。今回、明治時代に作られた模造も出陳されるのでどんな楽器かよくわかるでしょう。

天平人も楽しんだボードゲーム
木画螺鈿双六局(もくがらでんのすごろくきょく)

中倉172、縦33.0㎝、横71.0㎝、高さ11.3㎝

「すごろく」の名前がついていますが、実際には「おはじき」のような遊びに使われたとも考えられているゲーム盤です。もっとも、おはじきとは言ってもそこは正倉院宝物。象牙、木画(もくが)、螺鈿(らでん)など、正倉院を代表する至高の技と美のオンパレードです。 黒っぽい紫檀(シタン)材を生かした螺鈿と象牙の配置、配色などは、シックななかに華やぎのある、まさに大人のためのゲーム盤。木画など丁寧で細やかな細工をぜひ間近でご覧ください。

女性に人気のカントリー調デザイン
碧地金銀絵箱(へきじきんぎんえのはこ)

中倉151、縦27.9㎝、横17.5㎝、高さ10.6㎝

仏への捧げものに用いられた献物用の箱。美しいライトブルーが印象的ですが、何とふたの裏側はピンク色で塗られています。ライトブルーとピンクという対照的な色を用いた色彩センスに脱帽です。蓋の上面、側面を問わず、隙間なく対称的に、しかし勢いのあるタッチで花喰鳥や植物、虫などが描かれ、いかにも天平的なデザインです。底の裏に「千手堂」の墨書があり、東大寺三月堂付近の千手堂(中世に廃絶、場所不明)で使用されたと考えられています。

異国情緒あふれるシルエット
金銅水瓶(こんどうのすいびょう)

南倉24、口径8.8㎝、胴径11.2㎝、注口の長さ21.7㎝、高さ19.0㎝、重さ569.5g

長く低く伸びる注ぎ口。その先端にはトサカをもった鳳凰の頭がついています。一度見たら忘れられない流れるようなシルエット。しかしこの水差しは、銅をたたいて打ち出した10数個もの異なるパーツを、鑞(ろう)付けと鋲(びょう)留めでつなぎ合わせて作るという実に複雑な方法で形成されています。ところどころに花弁のモチーフをあしらったシンプルながら飽きの来ないデザインは、正倉院宝物のなかでも類例のない異色の存在です。

動物が隠れています
緑瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)

中倉72、長径22.5㎝、短径10.7㎝、高さ5.0㎝、重さ775g

長楕円形に複数のひだが入った坏のスタイルは、ササン朝ペルシアに由来するものですが、12曲は珍しい例だと言えます。濃い緑はガラス成分に銅を混入し、発色させたもの。酸化鉛を多く含む鉛ガラスで作られていることから、西方の意匠を意識して作った中国製の坏、と考えられています。長い方の曲面には植物をモチーフにした文様と、口縁の近くにうずくまるウサギらしき動物が、短い側面にはチューリップやアザミにも見える大きな花が刻まれ、透過する光に美しい影を落とします。

塔に納められた聖武天皇の夢
最勝王経帙(さいしょうおうきょうのちつ)

中倉57、縦30㎝、横53㎝

聖武天皇は仏教による国家鎮護を目指し、天平13年(741)2月14日、各地に国分寺と国分尼寺を置くよう詔(みことのり)を出しました。そこには各寺院に七重塔を建て、『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』を納めよとありました。経帙とは竹ひごを芯として面状に繋ぎ装飾したもので、お経をくるくると数巻ずつまとめる収納具。銘文からこの経帙は、東大寺の七重塔に納められた『金光明最勝王経』を入れるものであったことがわかります。残念ながら、入っていた経典は伝わっていません。

正倉院展、ゆっくり楽しむなら…

その年に出陳された宝物と次に会えるのは早くても10年後という「正倉院展」。日中はお目当ての宝物を観にくる人で、大混雑が予想されます。人だかりもなく、本当にじっくり観覧できるのは閉館前の30分ぐらい。このゆゆしき問題を解決してくれるのが、当日の夕方から当日券売り場で販売される「オータムレイトチケット」! 月~木は16:30以降(チケット販売は15:30~)、金~日・祝日は18:30以降(チケット販売は17:30~)に入場でき、料金もとってもお得です。今年は〝夜の正倉院展観覧〟と洒落込んでみてはいかが? オータムチケットの購入にも列はできるので、博物館には早めに着くようにしてね♪

DATA

会期

2017年10月28日(土)~11月13日(月)
全17日間(会期中無休)

会場

奈良国立博物館 東新館・西新館

開館時間

9:00~18:00
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日は20:00まで
(10月28日・29日、11月3日~5日、11月10日~12日)
※入館は閉館の30分前まで

観覧料金

一般1,100円    (前売・団体1,000円、オータムレイト800円)
高校生・大学生700円(前売・団体600円、オータムレイト500円)
小学生・中学生400円(前売・団体300円、オータムレイト200円)
親子ペア(一般1名と小・中学生1名、前売のみ)1,100円
※本チケットで名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧可能
※障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料

問い合わせ先

奈良国立博物館 TEL 050-5542-8600

ホームページ

http://www.narahaku.go.jp/


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