vol.26 山城歩きに、いざ参る!in平群町
掲載日:2017年3月28日
「嶋左近(しまさこん)」を知っているかな。
豊臣秀吉の家臣・石田三成につかえたことで知られる戦国武将だよ。名は清興(きよおき)。
嶋氏は中世に平群谷を本拠地としていた国人で、代々「左近」を名乗ったんだ。
史料が少なくて謎だらけの人物なんだけど、「三成に過ぎたるものが2つあり、嶋の左近と佐和山の城」とうたわれ、三成が自分の禄高の半分を与えて召し抱えたともいわれるほどの人物だったそうだよ。
何を隠そうこの僕です。
関ヶ原の戦いでは、三成のもと西軍で徳川家康率いる東軍と戦ったんだ。結果はみんな知っての通りだけど、左近の「鬼をも欺く」と評された勇壮な戦いぶりは、後世の語り草になった。戦場で戦った兵士のなかには、関ヶ原から数年が過ぎても戦場での悪夢にうなされ、左近の「かかれーっ!」という声を夢枕に聞いて恐怖に飛び起きたとか…。
登城せよ!椿井城
嶋左近の城ともいわれるのが平群町の椿井城(つばいじょう)。
矢田丘陵の南西の端に位置する南北310mの山城だよ。椿井氏が築城し、のちに嶋氏が取って代わったと考えられている。いまは城跡だね。
椿井城は「連郭式山城」。南北に2つの山頂(ピーク)があって、主郭と考えられるのはより高い北側の郭(くるわ)なんだって。(ただし2017年2月現在遺構の保護のため北郭には立ち入り禁止。南は見学可)
麓の椿井春日神社脇の登り口から登城しよう。南にも登り口があるけど、こっちが城の正門に続く「大手道」と考えられるルートなんだ。
整備されているとはいえ山道。装備はしっかりね!
遺構からは敵兵と戦うための工夫がされていたことが読み取れるよ。
帰り道は南の道から降りていこう。
この山道の情趣! 椿井城跡は登りやすいから山城初心者にもおすすめだよ。
お次は寅、トラ、虎。寅のお寺へやってきた
山門に大きな張り子の寅。ここは信貴山朝護孫子寺(しぎさんちょうごそんしじ)。
標高437mの山裾から山頂にかけて築かれた山岳寺院なんだ。
寅と聖徳太子ゆかりのお寺なんだ。528年の寅年、寅の日、寅の刻にこの山に毘沙門天(びしゃもんてん)が現れ、その加護で太子は物部守屋(もののべのもりや)との戦いに勝つことができたと伝えられている。山号も太子がつけたといわれているよ。ご本尊の毘沙門天は戦勝に霊験があると、武田信玄など、戦国武将からの信仰も篤かったんだ。
松永久秀もその1人。
松永久秀の家紋だよ。
北条早雲、斉藤道三とともに「戦国三大梟雄(きょうゆう)」と呼ばれる戦国武将が松永久秀(弾正/だんじょう)だよ。室町幕府13代将軍の足利義輝や主君の三好家の暗殺、東大寺の大仏を焼き払ったことなどから、稀代の大悪人といわれたんだ。
戦国時代は、大和国内でもいろんな勢力争いがあったらしい。松永弾正は信貴山の北側に築かれたこの「信貴山城」に腰を据えて、大和の国人たちを配下に収めた。三成に仕える前の左近は、筒井順慶を主君としており、ともに松永弾正と争ったとも考えられているよ。椿井城の争奪戦もあったとか…。左近が戦上手になったのは、松永弾正との戦いで軍略を磨いたからかもしれないね。
信貴山城攻略!ひたすら登るべし!べし!
今日ここへ来たのは、信貴山城跡へ登るため。お寺から城跡に行けちゃうんだ。
頂上の空鉢護法堂(くうはつごほうどう)を目指そう。そこに城跡があるよ。
ずっと登るよ。ずーっと。
登ること約20分…足がガクガクしてきたら…!?
到着!
信貴山城は県内最大級の中世城郭。いま空鉢護法堂のあるあたりは城郭の最高所で、小さいながらも天守が建っていたと考えられている。敵ながら立派なお城だったんだろうね。
北に下る道は、松永久秀の居館「松永屋敷」跡に続いている。
松永屋敷跡になにやら怪しい影が…
松永久秀!?いざ、勝負!
一時は大和一国を支配していた松永久秀だけど、信長に背いたために兵をさしむけられ、この信貴山城で織田勢の大群に包囲されてしまったんだ。最期を悟った久秀は、信長がかねてから所望していた名物茶器の平蜘蛛茶釜を粉々に砕いて、自害したといわれている。
松永氏は滅亡。その後お城は廃城に。敗れた久秀だけど、その強烈な生き方に惹きつけられる戦国ファンは多いんだ。
左近くん、宿坊に泊まる
1日に2つも山を登ると、いくら猛将の僕とはいえ疲れたよ~。膝が笑っているよ!
というわけで、僕は朝護孫子寺の宿坊に泊まることにしたよ。
宿坊は本来お坊さんや参拝者向けの宿泊施設。最近は利用の裾野が広がり、観光目的でも泊まらせてもらえるんだ。朝護孫子寺には成福院(じょうふくいん)、千手院、玉蔵院(ぎょくぞういん)の3つの塔頭(たっちゅう)があり、それぞれ宿坊としても親しまれている。
ここが僕の部屋だよ。こたつでリラックス~。
宿坊で座禅やお坊さん・尼さんの1日体験入門なども体験させてもらえるよ。
今日は写経にチャレンジ。
松永弾正も右筆(代筆)で成り上がった男。負けていられない!
せっせ、せっせ…
ふう。写経で功徳(くどく)を得て、心がゆったりしたよ。
自分の城のパトロールに敵情視察。今日も充実した1日だった。
そうそう、関ヶ原の戦いで左近は、「いまどきの諸侯は松永久秀のような果断に欠けている」とぼやいたそうだよ。乱世の梟雄と呼ばれた松永久秀だけど、武将としての力量は高く評価されているんだ。左近も、敵将といえども久秀には一目置いていたんだね。
戦国の世を駆けた兵(つわもの)の数だけのエピソードがある。それがいまを生きる人々の心を魅了してやまないんだね。
平群町 TEL 0745-45-1001(平群町役場観光産業課) 【平群町役場へは】 ①西名阪自動車道香芝I.C.から国道168号経由、約9km、約25分 |
左近くん 誕生日:7月1日 左近くんは平群出身の戦国武将、「嶋左近」がモチーフ。キャラクターの出で立ちは、江戸時代中期成立の『常山紀談』という軍記物の逸話集を参考にしています。相棒〝長屋くん〟とともに、平群のまちづくりをお手伝い中!2017年1月の「第7回県内ゆるキャラ大投票」では、85キャラ中8位と大健闘しました。 |
左近くんがいく 南都銀行平群支店
町内には店舗が2つあるよ。今回は平群支店にお邪魔したんだ。平群町を南北に走る国道168号線に面しているから、すぐに見つかると思うよ。椿井城跡にも近いんだ。
みんなで記念撮影。 | 僕の貯金通帳を作ったぞ!武将たるもの蓄えも大事だからね。 |