正倉院展
掲載日:2024年9月20日
華麗にして精緻な天平工芸の極み
「第76回 正倉院展」
10月になれば、いよいよ「正倉院展」シーズンの到来。ご注意いただく内容をまとめましたので、お出かけの前にご確認ください。
令和6年(2024)の「正倉院展」について
2024年10月26日(土)から11月11日(月)までの17日間にわたり開催される、第76回目となる正倉院展。調度品、楽器、服飾品、仏具、文書といった正倉院宝物の全容をうかがえるような多彩なラインナップの品々が出陳されます。観覧には、事前予約制の日時指定券(当日各時間枠開始時刻まで販売)が必要です。
世界に誇る「正倉院宝物」
シルクロードの終着点ともいわれる奈良。奈良時代にはすでに国際交流が盛んで、異国の文化や文物が遣唐使などによってたくさんもたらされました。その刺激を受けて高級素材を用い、技の限りをつくした異国情緒あふれる工芸品、調度品、仏具、楽器などが国内でも作られました。正倉院にはこれらのほか、戸籍などの文書類、経典、薬物など、膨大な点数の品々が収められ、整理された宝物だけでも9千件を超えています。
この宝物のはじまりとなったのは、天平勝宝8歳(てんぴょうしょうほうはっさい)(756)の聖武天皇の七七忌に、光明皇后が天皇の冥福を祈って大仏に献上した天皇ゆかりの品々です。その後、時を経て、宝庫は3つに仕切られ、北倉にはおもに聖武天皇のご愛用品、中倉には東大寺に献納された品々や文書、南倉には仏具や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)などの東大寺の儀式に関わる品々が納められました。1200年もの昔から大切に継承された宝物群は世界にも類がなく、まさに世界の至宝ともいえるのです。
そもそも正倉院って?
学校できっと一度は習う「正倉院」を、実際にご覧になったことはありますか? 正倉院は東大寺大仏殿の北西、約300mのところにあり、現在は宮内庁の機関である正倉院事務所が管理しています。国宝に指定されている「正倉院正倉」は南北約33m、高さ約14m、総ヒノキの高床式校倉造(あぜくらづくり)の倉庫で、8世紀中頃に建てられました。かつては「校倉造の木材が呼吸して通気性がよかったために宝物が守られた」という説が信じられていましたが、実際には、宝物は辛櫃(からびつ)と呼ばれる櫃に収められたために適度な温湿度調整がなされ、今に伝わったというのが正しいようです。現在宝物は、正倉に近い鉄筋コンクリートの東宝庫・西宝庫で管理されており、正倉には櫃などが納められています。正倉院宝物は通常非公開ですが、毎年10月から11月にかけて総点検が行われ、この時に宝物の一部が奈良国立博物館に貸し出されて、「正倉院展」として公開されます。
正倉院は1つだけじゃなかった?
現在の「正倉院」の本当の名前は「正倉院正倉」といいます。奈良~平安時代、日本各地の役所や大きなお寺には、大事なものを収める「正倉」と呼ばれる倉庫が置かれ、正倉がたくさん建ち並ぶ一画を「正倉院」と呼びました。つまり正倉院は、かつては一般名詞だったのです。しかし時代が下るにしたがって数が減り、最後にたった1棟、東大寺の「正倉院正倉」だけが残りました。そのため今では「正倉院」と言えば、かつて東大寺の正倉院正倉だった建物を指す固有名詞となっています。
★校倉造の「正倉院」も見に行こう!
正倉院は塀の外から見学できます。せっかくお出かけするなら、正倉院展と正倉院、両方を見てコンプリートするのはいかがでしょうか。
(申し込み手続き不要、見学無料)
公開日 |
正倉院展の会期中は毎日 |
---|---|
場所 |
東大寺大仏殿から北へ300m |
開館時間 |
正倉院展の会期中は10:00~16:00 |
今年絶対見ておきたい正倉院宝物セレクション
黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)
背面に十二弁の宝相華文を表した宝飾鏡
南倉70、長径18.5cm、縁厚1.4cm、重さ2177g
南倉 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡 宮内庁正倉院事務所
正倉院に伝来した宝飾鏡のひとつで、背面に十二弁の宝相華文(ほうそうげもん)が表されています。その花弁は銀の薄板に、黄、緑、深緑という3色の七宝釉薬(しっぽうゆうやく)を焼き付けたもので、さらに文様の区画線には鍍金が施されています。花弁の入り隅には霰(あられ)文様を打ち出した三角形の金板が嵌め込まれ、全体として十二稜形をなしています。ガラス質の釉薬が持つしっとりとした艶感が特徴です。漲(みなぎ)る生命力を感じさせる深い緑と金色の対比が類い希な美しさを生み出しています。
鹿草木夾纈屛風(しかくさききょうけちのびょうぶ)
樹の下に対の鹿。西アジア起源の文様を持つ国際色豊かな屏風
北倉44、長さ149.5cm、幅56.5cm 本地長125.1cm/幅49.5cm
北倉 鹿草木夾纈屛風 宮内庁正倉院事務所
『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に記載される17組の「驎鹿草木夾纈屛風(りんろくくさききょうけちのびょうぶ)」の一部にあたるもの。夾纈(きょうけち)とは、図柄を彫り出した板で裂を挟んで防染し、複数の色を使って染める技法のことです。本品は二つ折りの裂を挟み左右対称の文様を染め出しています。大きな樹木のもとで草花をはさんで向かい合う2 頭の鹿を表し、周りには鳥や草花を配しています。樹の下に対の動物を表す文様は西アジアに起源があり、国際色豊かな正倉院宝物の一面がうかがえます。
沈香木画箱(じんこうもくがのはこ)
ほとけへの捧げものを納めたと考えられる、舶来の高級な素材を用いた箱
縦28.0cm、横44.6cm、高さ14.6cm
中倉 沈香木画箱 宮内庁正倉院事務所
床脚(しょうきゃく)の付いた長方形、逆印籠蓋造(ぎゃくいんろうぶたづくり)の箱。表面には菱形や三角形に切った沈香の薄板を貼って甃文(いしだたみもん)を表し、象牙の界線やコクタンの薄板、矢羽根文(やばねもん)の木画などで区画しています。床脚の束は紺色に染めた象牙の表面に草花文を彫り表した撥鏤(ばちる)技法で装飾。箱内にはビャクダンの薄板を貼り、花文を織り出した錦の内張/嚫(うちばり)を入れています。
舶来の高級な素材をぜいたくに用い、華麗に装飾した箱であることから、貴重な品物を納めてほとけに捧げられたと考えられています。
伎楽面 酔胡従(ぎがくめん すいこじゅう)
法会などに際し行われた伎楽に用いる仮面
南倉1、縦30.8cm、横24.3cm、奥行30.2cm
南倉 伎楽面 酔胡従 宮内庁正倉院事務所
伎楽に用いる仮面。伎楽は飛鳥時代に大陸から伝わった仮面劇で、法会(ほうえ)などに際して盛んに行われました。平安時代以降、次第に衰退したため内容の詳細には不明な点が多いですが、仮面は14種で23面を一組としていたようです。8人からなる酔胡従は酔胡王(すいこおう)に従って楽舞の終盤に登場し、泥酔した演技で観衆を楽しませたと推測されています。本品はキリの一材製で、表面に彩色を施し、頭髪には馬の鬣(たてがみ)を用いたと推定されます。面裏に墨書があり、捨目師(しゃもくし)という人物の作とわかります。
<第76回 正倉院展>DATA
会期 | 令和6年(2024)10月26日(土)~11月11(月)※会期中無休 |
---|---|
会場 | 奈良国立博物館 東新館・西新館 |
開館時間 | 8:00~18:00 ※金曜日・土曜日・日曜日、祝日は20:00まで ※入館は閉館の1時間前まで |
観覧料金 | 観覧には事前予約制の「日時指定券」の購入が必要 一般2,000円 高校生・大学生1,500円 小学生・中学生500円 キャンパスメンバーズ券 学生400円 レイト割 一般1,500円 レイト割 高大生1,000円 レイト割 小中生無料 ・障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名を含む)、未就学児、レイト割(小中生)、奈良博メンバーシップ・プレミアムカード会員の方(1回目及び2回目の観覧)、賛助会会員(奈良博、東博[シルバー会員を除く]、九博)、清風会会 員(京博)、特別支援者は無料です。 ・無料対象の方は、「日時指定券」の購入は不要です。証明 書等をご提示ください(小中学生以下は不要)。 |
日時指定券の発売日 | 9月6日(金)10:00~ 「日時指定券」の変更、キャンセル、払い戻し、再発行はいたしません。 |
販売場所・時間 | ・ローソンチケット〔Lコード:59600〕ローソンおよびミニストップ各店舗、インターネット〈https://l-tike.com/〉 ・CNプレイガイド[電話(自動音声)による受付のみ ※詳細は後日発表します] ・展覧会オンラインチケット〈https://www.e-tix.jp/shosoin-ten/〉 ・美術展ナビチケットアプリ 事前に「美術展ナビチケットアプリ」のダウンロードが必要です。 美術展ナビチケットアプリはスマートフォン専用となります。 (推奨環境:iOS 13以降、Android 6.0以降) |
日時指定券のご注意 | キャンパスメンバーズ会員の学生は、奈良国立博物館と連携する特定の大学等に属する学生のみが対象となります。当日会場入り口で学生証の提示が必要です。キャンパスメンバーズ会員校等は、奈良国立博物館ウェブサイトでご確認ください。キャンパスメンバーズの学生が誤って通常料金で「日時指定券」 を購入した場合も、払い戻し等はできませんのでご注意くださ い。 |
レイト割について | レイト割は月~木曜日は午後4時以降、金・土・日曜日、祝日は午後5時以降の「日時指定券」に適用されます。 |
問合せ先 | 奈良国立博物館 TEL 050-5542-8600(ハローダイヤル) |
公式サイト | 〈奈良国立博物館〉https://www.narahaku.go.jp 〈正倉院展〉https://shosoin-ten.jp/ |
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