東大寺二月堂修二会(お水取り・お松明)
掲載日:2024年2月5日
東大寺二月堂修二会(お水取り・お松明)(2024年)
奈良に春を呼ぶ東大寺二月堂のお水取り(修二会/しゅにえ)。お坊さん(練行衆/れんぎょうしゅう)がこの1年の罪を二月堂本尊の十一面観音に悔い、新しい年がいい年であることを祈る行事です。天平勝宝4(752)年に始まってから1回も途絶えることなく続き、今年でなんと、1273回目を数えます。
本行は3月1日(金)~14日(木)までの2週間。12~13日の深夜に行われる「お水取り」や、二月堂の舞台に毎晩あがる「お松明」はよく知られますが、そのほかにも興味深い行事やポイントがたくさんあります。
お松明の拝観について
2024年修二会は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策のため、お松明等の拝観方法などが例年とは一部異なります。3月1日から14日までのうち、11日・12日以外は二月堂周辺の見学可能場所の人数が制限されます。毎日一定数を超えれば、以降お越しの方はお松明を拝観することはできません。12日は夕方5時以降、二月堂周辺の事前に設定された区域内に滞在することはできず、お松明の拝観もできません。1273年に渡る長い歴史を途絶えさせることのないよう皆様のご理解とご協力をお願い致します。
◎詳細は東大寺公式ホームページをご覧ください。http://www.todaiji.or.jp/
行事の内容
大中臣祓(おおなかとみのはらい)
内容 | 本行前日の夕闇迫るころ、密教をつかさどる咒師(しゅし)役の練行衆が、幣(へい)をもって神道と関わり深いことばを「黙って」読み、ほかの練行衆を祓(はら)って歩きます。わずか10分ほどで終わりますが、神仏習合を目の当たりにする興味深い行事です。春を待ちきれない天狗たちが、これをみて騒ぎ風を起こすことから「天狗寄せ(てんぐよせ)」の別名をもちます。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】2月29日午後6時~ 【場所】二月堂北側階段下 |
授戒
内容 | 1日の午前0時45分、「おめざ~、おめざ~」の声に練行衆が起き、二月堂北側の階段下の参籠宿所(さんろうしゅくしょ)から細殿(ほそどの)をはさんだ食堂(じきどう)に向かいます。和上(わじょう)を勤める練行衆が、戒めを守れるかどうかを練行衆に問うと、「よく保つ、よく保つ、よく保~つ」の唱和が返ってきます。もちろん見学者は中には入れませんが、場合によっては戸の隙間からわずかにのぞき見ることもできます |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】3月1日午前0時45分~ 【場所】二月堂北側階段下の食堂 |
一徳火(いっとくび)
内容 | 授戒を終えた練行衆は二月堂に上がり、法要の準備を行いますが、この時点では法要の行われる内陣はまだまっくらです。堂童子が火打石で新しい火を切り出します。直前に二月堂内の明かりはいっさい消され、カチッという火を切り出した音と同時に、青い閃光がフラッシュをたいたように走ります。誕生した火は燈明皿に移され、堂司が内陣に運び入れると、いよいよ二週間にわたる法要の本格的な始まりです。またこの火は1年間消されることはありません。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】3月1日午前2時~ 【場所】二月堂礼堂 |
六時の行法(ろくじのぎょうぼう)
内容 | 堂内に新しい火が入った後に勤められるのが「日中(にっちゅう)」の時(じ)です。修二会では昼から深夜まで、1日6回の時(じ)が勤められ、これを「六時の行法」と呼びます。「日中(にっちゅう)」、「日没(にちもつ)」「初夜(しょや)」「半夜(はんや)」「後夜(ごや)」「晨朝(じんじょう)」の6回で、練行衆らによる美しい声明(しょうみょう)が唱えられます。内容は本尊の十一面観音に一年の罪をひたすら懺悔(さんげ)し、また本尊を称美し、新たな1年の国家の安泰や、世界平和を祈ります。夜には、時と時の合間に法螺貝も吹き鳴らされ、大きな音に驚かされます。また礼堂では、体重を乗せて膝を板につよく打ち懺悔する「五体投地」も行われます。 |
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時間、場所、注意事項 |
【日時】 |
練行衆(れんぎょうしゅう)
内容 | 修二会に参籠する僧侶は全部で11人。毎年12月16日に発表されます。役柄は上から「和上(わじょう)」「大導師(だいどうし)」「咒師(しゅし)」「堂司(どうつかさ)」の四職(ししき)と、「北座衆之一」「南座衆之一」「北座衆之二」「南座衆之二」「中灯」「権処世界」「処世界」の平衆(ひらしゅ)です。そのほか、三役や童子など身の回りの世話をする人々を含め、総勢40人もが、宿所を中心に「合宿生活」を送ります。 |
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食堂作法(じきどうさほう)
内容 | 一日の行はお昼の食堂での作法から始まります。大きな長方形をかくように席についた練行衆の前に、その日の唯一の食事となる一汁二菜の膳が整えられていきます。食事を前にして、長い長い祈りが続きます。食べ始める合図は、食堂の中央におかれた大きなおけから、堂童子が柄杓を手にし、くるりと1回まわったとき。食事中話してはいけないので、お湯の催促は箸でお膳をたたくことが決まりです。目を引くのは山盛りに盛られたごはん。もちろん全部食べるのではなく、手をつけなかったものは行を支える人々の食事となります。また少量を紙に包み、つつんだものは「さば」として、食堂を出た練行衆が閼伽井屋の屋根に向かって投げます。ちゃっかりとおこぼれを待つ鹿の姿も見られます。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】連日正午~(3月5日は午前11時30分~、3月8日は午後0時20分頃~) 【場所】二月堂下の食堂 |
数取懺悔(かずとりさんげ)
内容 | 「日中」の時に引き続き、中灯、権処世界、処世界の三人が、内陣から礼堂に出て、三千遍の礼拝を行います。3000回とはいっても、10回の後は10、20、30、…100回、100回のあとは100、200、…1000と数え、これを3セット行うので、実数は3000回ではありませんが、合掌した手を頭上に大きく手をすりあげ、何度も礼拝を行うのはかなりの運動量で、ときには頭から湯気が立ち上るほどです。戸帳の端に立った堂司が、速度のようすを見ながら大きな声で数を取ります。上座の練行衆も内陣で行っていますが、最後まで行うのはこの3人だけです。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】3月5・7・12・14日の日中の時のあと(5日は13時頃~、他の日は13時30分頃) 【場所】二月堂礼堂 |
松明
内容 | 「お松明」の名で呼ばれるくらい、修二会の代名詞として知られる大きな松明。担いでいるのは練行衆ではなく、それぞれに一人つく、世話係りの童子と呼ばれる人々です。もともとは道明かりに過ぎなかったのが、どんどん大きくなり、今の形になりました。竹の軸に杉の葉をさして、毎朝童子自ら作ります。1~11日と13・14日の通常の松明は、長さ約6m、重さは60kg、12日の籠松明は長さ8m、重さ80kgにもなるといいます。火の粉を浴びれば無病息災、落ちた杉の葉は競うように拾われていきます。8日の午前中は、食堂南側で籠松明づくりの仕上げをみることができます。 |
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時間、場所、注意事項 | <3月1日~14日 ※12日を除く> ◎お松明は基本的にご覧いただけますが、二月堂下芝生や広場の人数が一定数以上になれば、以降お越しの方は第2拝観所へ誘導します。第2拝観所も同様になれば、以降はお松明がご覧いただけない場合があります。 ◎予約不要 ◎堂内や局での聴聞はできません。 <3月12日> ◎どなたも二月堂下芝生や広場でお松明をご覧いただくことはできません。 ◎夕方5時以降、二月堂周辺の事前に設定された区域内に滞在することはできません。 ◎堂内や局での聴聞はできません。 |
写真提供/奈良市観光協会 | ||
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神名帳(じんみょうちょう)
内容 | 「初夜」の時のあとに毎晩読み上げられる神名帳。はじめはゆっくり重々しく、次第に速くなり、後段は聞き取れないほどのスピードで、「~の大明神、~の大明神」と日本全国、522柱の神々の名前を読み上げます。「初夜」の時がおわったあと、法螺貝がひとしきり吹き鳴らされ、やがてパンパンと拍手(かしわで)の音が聞こえ、「例におって~」の声が聞こえたら、神名帳読み上げのはじまりです。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】連日、初夜の時のあと 【場所】二月堂内陣 |
過去帳(かこちょう)
内容 | 聖武天皇をはじめ源頼朝など、歴史の教科書で目にする人物をはじめ、東大寺に寄進をした人や、建造に関わった人々など、大勢の名前を読み上げる過去帳。緩急や抑揚をつけて、ときにはリズムよく、ときには厳かに、1時間弱の時間をかけて読み上げられます。なかでも有名なのが「青衣の女人」。鎌倉時代の練行衆が過去帳を読み上げていたところ、「どうしてわたしを読み落としたのか」と青い衣の女性が現れたため、あわてて「青衣の女人」と読み上げると、姿がかき消えたといいます。「当寺造営の大施主、将軍頼朝の右大将」と伸びやかな声が聞こえたら、もうすぐ。小さく低い声で、「青衣の女人」の名が呼ばれます。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】3月5日と12日の神名帳後の休憩を終えたあと。 【場所】二月堂内陣 |
法華懺法(ほっけせんぽう)
内容 | 「半夜」の時のあと、礼堂で行われる声明(しょうみょう)。練行衆3人で唄われますが、美しい音楽が非常に印象的な声明です。西の局には静かに聴き入る聴聞者の姿が多く見られます。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】「半夜」の時のあと3月1~4日:午後11時頃~3月8~11日:午後10時30分頃~ 【場所】二月堂礼堂 |
走り
内容 | 『二月堂縁起』によれば、修二会の創始者・実忠(じっちゅう)は、笠置の山中で目にした天界の菩薩たちの法要に感動し、人間界でも行いたいと願い出ましたが、「天界の速い時間の流れに追いつくために走って法要を行う」と誓ったことで、これを行うことを許されたといいます。その伝説を色濃く感じさせるのが「走り」の行法です。内陣をぐるぐるとまわる練行衆たちはいつか一人、二人と差懸を脱ぎ、静かに礼堂に走り出ては五体投地を行います。「走り」が始まる前、堂童子によって戸帳が巻き上げられるさまは必見。走り終わった後、練行衆につづき、聴聞者にも閼伽井屋(あかいや)から汲み上げられた香水(こうずい)が配られます。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】いずれも「半夜」の時のあと 3月5日:午前0時30分頃~ 3月6・7日:午後11時15分頃~ 3月12日:午前0時15分頃~ 3月13日:午後10時50分頃~ 3月14日:午後10時頃~ 【場所】内陣と礼堂 |
小観音出御(こがんのんしゅつぎょ)と後入(ごにゅう)
内容 | 二月堂の本尊は秘仏の十一面観音で、大きい大観音と小さい小観音とがあります。いずれも絵でしかその姿を見ることはできませんが、修二会は前半の7日間は大観音に、後半の7日間は小観音に祈りを捧げます。このうち小観音は難波津に流れついた人肌の生身の観音だったとの伝説があり、この小観音を東大寺にお迎えしたのを再現するのが、この小観音の出御と後入です。夕方西正面から礼堂に運び出された小観音の厨子(ずし)は、練行衆や東大寺僧の礼拝をうけたあと、そこに安置され、日付が変わった深夜、「後夜」の時の途中で、内陣と局の間の外陣(げじん)をぐるりとまわって、ふたたび南側から内陣に戻され、西側正面に安置され、法要の対象がこのときに入れ替わります。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】 小観音出御:3月7日午後6時 小観音後入:3月8日午前0時30分頃 【場所】いずれも二月堂礼堂と外陣 |
水取り
内容 | 二月堂下の閼伽井屋(あかいや)の若狭井(わかさい)から、水を汲み上げる行事。閼伽井屋の中へは、咒師や堂童子など、限られた人しか入ることはできません。奏楽の中、1時間ほどかけて二月堂内陣に水を運ぶ、修二会の中心的行事です。伝説では、若狭の遠敷(おにゅう)明神が釣りに夢中になって二月堂へ来るのが遅れたため、おわびのしるしに水を湧かせたといいます。黒と白の鵜(う)が岩から飛び立ち、そのあとが若狭井となったとされ、閼伽井屋の屋根には、この鵜が造作されています。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】3月13日午前1時30分頃(「後夜」の時の途中に行われる) 【場所】二月堂下の閼伽井屋と北側の階段 |
達陀(だったん)
内容 | 国宝の木造建築を舞台に、大きな松明が参拝者をわかせるお松明。火事にならないかと心配になりますが、さらに驚かされるのがこの達陀です。二月堂内陣の中で、直径60cmほどの松明に火がつけられ、「だったん帽」と呼ばれる帽子をかぶり、火天と水天に扮した練行衆が、法螺(ほら)や鈴、錫杖(しゃくじょう)の音にあわせて、西正面で前後に飛び跳ねます。松明をかかえた火天は、そのまま松明を引きずりながら内陣を一周、これを炎が収まるまで続けます。最後は礼堂に松明が投げ倒され、聴聞者を驚かせます。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】 3月12~14日(実際の日付は下記の通り)の「後夜」の後の、咒師作法に続けて行われる 3月13日:午前3時頃~ 3月14日:午前0時45分頃~ 3月15日:午前0時頃~ 【場所】二月堂内陣と礼堂 |
だったん帽いただかせ
内容 | 行が無事終わった15日の朝、二月堂南の階段を上りきったところでは、「だったん帽いただかせ」として、子どもたちに帽子をかぶせる行事が行われる。実際の行中で使われた達陀(だったん)帽をかぶせてくれるもので、健康でよい子に育つとのことから、カメラを持った親子連れが多く訪れる。もちろん頼めば大人もかぶせてもらえる。 |
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時間、場所、注意事項 | 【日時】3月15日10時頃~15時頃 【場所】二月堂南側の階段を上りきったところ。料金は志納 |
東大寺二月堂修二会 問い合わせ
東大寺 0742-22-5511
アクセス
JR・近鉄奈良駅から市内循環バス約5分、
大仏殿・春日大社前下車、徒歩約15分
周辺情報
「お水取り」も奈良も楽しむなら!
お水取りの本行は昼間も行われていますが、お松明の上がる夜までは、ほかのスポットも楽しみたいという人にはこんなコースがおすすめ! ただし夜に備えて、コースは適宜、短くしてくださいね♪
《散策コース》
白毫寺~新薬師寺~入江泰吉記念奈良市写真美術館~上の祢宜道(ねぎみち)~春日大社~奈良国立博物館~東大寺二月堂(4.7㎞)
白毫寺
スタートは白毫寺。境内へは風情ある石段を登りましょう。段数は結構ありますから、頑張って! 秋ならば両側に萩の花が石段を隠すかのように咲き乱れます。奈良三名椿の1つ「五色椿」の見ごろにはまだすこ~し早いかもしれないけれど、春の気配に満ちた高台にある境内からは、奈良市内を見渡すことができて、とっても気持ちいいですよ。閻魔さまともご対面。夜のお水取りに備えて気持ちを引きしめちゃいましょう! |
新薬師寺
白毫寺からは北へ、新薬師寺を目指しましょう。新薬師寺は東大寺を建立した聖武天皇の病気の平癒を願って、光明皇后が建てたお寺。東大寺ともご縁が深いんです。山門を入れば、天平時代に建てられた本堂が目に飛び込んできます。おだやかな本尊薬師如来と、迫力満点の十二神将にご挨拶しましょう。ちなみに新薬師寺では毎年4月8日、東大寺のお坊さんも出仕して、松明を間近にする修二会が行われています。 |
入江泰吉記念奈良市写真美術館
新薬師寺の西側には、写真家の入江泰吉さんの作品を展示する入江泰吉記念奈良市写真美術館があります。奈良大和路の風景写真や仏像写真で知られる入江さんですが、実は「12人目の練行衆」と異名をとるほど、お水取りの撮影にも熱心だったことをご存知ですか? 展示やハイビジョンギャラリーで入江さんの撮影したお水取りの光景を見て、夜へ向けて気持ちを盛り上げておくのもいいですね! 館内にはカフェもあるので休憩もできます。 |
上の祢宜道(ねぎみち)
春日大社
新薬師寺や写真美術館からは、古来、春日社の神職が境内に通ったという「上の祢宜道(ねぎみち)」を抜けて春日大社へ。時期が合えば白い馬酔木の花が見られるかも。春日大社は天平時代の奈良の基盤を築いた藤原氏の氏社。雅な丹塗りの社殿は、目的地の二月堂とは雰囲気も大きく異なるので、同じ奈良でもこんなに違う!ことを実感するのに最適。寒かったり疲れたりしたら、国宝殿のカフェでお茶しましょう。春日大社から若草山山麓を通れば二月堂へ一直線です。 |
奈良国立博物館
お水取りそのものの歴史や資料を知りたいなら、春日大社から奈良国立博物館へ。毎年恒例の「お水取り展」で貴重な資料を事前に観ておくのもいいですね。お堂の中ではなかなか見られないお坊さんの着物や、差懸(さしかけ)と呼ばれる木沓(きぐつ)、各種の鈴などが展示されています。博物館内やその一帯には食事のできるお店も多いので、腹ごしらえにもおすすめ! さあ、そろそろ日が傾いてきたら、防寒を万全にして、いざ、二月堂へ! |
東大寺二月堂
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