土佐街道 その1 壺阪山駅から旧高取藩筆頭家老屋敷へ
掲載日:2010年5月20日
奈良県高市郡高取町にある土佐の町は、高取藩2万5000石の城下町として発達しました。飛鳥時代、都造営のために連れて来られた土佐(現在の高知県)の人々が国に帰ることができず、故郷を懐かしんでつけた地名と伝えられています。その土佐の町の南の高取山に、かつて壮麗な城郭を誇った高取城。お城へ向かって、町の中をまっすぐに伸びるメインストリートが土佐街道です。
壺阪山駅~勧覚寺(かんがくじ)遺跡~子嶋寺~光永寺~西の辻~夢創舘・くすり資料館~札の辻跡~信楽寺(しんぎょうじ)~小島神社~総門跡~家老屋敷跡~旧高取藩筆頭家老屋敷長屋門~夢創舘~壺阪山駅(約2時間30分)
土佐街道ウォーキングの起点は近鉄吉野線壺阪山駅。まずは渡来系の本拠地・観覚寺遺跡を経由して子嶋寺へ。あぜ道からはキトラ古墳が見え、のどかな光景が広がりますが、かつては飛鳥京に近く華やかな国際都市だったといいます。高取城二ノ門を移築した門のある子嶋寺を見学後、いよいよ土佐街道に入ります。街道に入ってすぐの光永寺には、石の片方に大陸系の人物の横顔を彫った人頭石があります。
土佐街道にはかつて500軒もの商家や町家が建ち並んでいました。現在も「つし二階建て連子格子(れんじごうし)」の町家が残ります。「つし二階」とは軒高が低い町家の通りに面した屋根裏空間で、天井が低く、使用人の部屋や物置などとしても利用されました。つし二階には、藩主を高いところから見下ろさないために虫籠窓(むしこまど)を設け、行列を襲うものが隠れないよう家と家の間は隙間なく建てられています。藩主・植村家の家紋「一文字三剣」のある瓦が乗った自転車屋さんの屋根、一見町家風なのによく見ると珍しい大正時代の洋風建築、道の両端に流れる江戸時代の側溝、町の主要産業だった漢方薬の看板を掲げた家。街道の石畳には、薬草の絵を描いたタイルもはめ込まれています。かつて御典医として仕え、高取城の下屋敷の表門を玄関に移築した医院は、レトロな待合室と診察室もまるで映画のセットのよう。町にはいろんな時代の息づかいが感じられます。すぐ先の西の辻には大正時代に奈良県が設置した道路の起点を示す「高取町道路元標(もとひょう)」があり、辻を西へ進めば和歌山へ続く紀路(きじ・きいじ)にぶつかります。
やがて街道は「右つぼさか、吉野」と刻まれた石標の建つ「札(ふだ)の辻跡」へ。ここから南は、かつて武家屋敷が建ち並んだエリア。当時は釘抜門(くぎぬきもん)と呼ばれる門があり、町人の住む町家エリアとは区切られていました。札の辻を西に向かうと夫婦愛の物語で知られる「壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)」の主人公「お里・沢市」のお墓がある信楽寺や、雨乞い祈願成就で奉納された「ナモデ踊り」の絵馬がある小島神社に出ます。石燈籠がずらりと並ぶ神社の参道からは、渡来系氏族の住居跡・清水谷(しみずだに)遺跡や金剛葛城山がよく見えます。案内をしてくれた「たかとり観光ボランティアガイドの会」の外島(とじま)真名実さんのオススメの風景です。
小島神社から民家の間の細い路地を抜けて、かつて複数の武家屋敷が建つ外構の入口にあった総門跡へ。朽ちかけた築地塀(ついじべい)の一部が残っています。ここから旧高取藩筆頭家老屋敷長屋門(県指定重要文化財)へはすぐ。美しいなまこ壁の長屋門は土佐街道のシンボル的存在で、かつては門の中に使用人が住んでいたそうです。向かいに広がる野原には藩主の下屋敷がありました。ここから南へ山道を登ると、「芙蓉城(ふようじょう)」とも呼ばれた名城・高取城にたどり着きます。
途中の観光案内所「夢創舘」では、高取町内の観光・イベント情報を得られるほか、お土産物販売やおいしいコーヒーもあり休憩には最適。裏手にはくすり資料館があり、薬の町・高取の歴史を知ることができます。
高取城二ノ門を移築した子嶋寺山門 | 光永寺の人頭石(正面と側面) | 高取藩主植村家の家紋が入った瓦(左)とつし二階の虫籠窓 | 観光案内所「夢創舘」 |
小島神社参道 | 旧高取藩筆頭家老屋敷長屋門 |
出展者にも来館者にも無料で開放、「町家のギャラリー輝(かがやき)」
2009年10月にオープンした土佐街道「町家のギャラリー輝」。館名の「輝」は、高取城址の麓にまっすぐ伸びる土佐街道を「天の川」に見立て、無数に輝く星をイメージしてつけられたもの。明治~大正期、料理屋として使われていた町家を改装して、手工芸品を中心にした展示を行っています。来館者はもちろん出展者も使用料はなんと無料!すでに1年以上先まで予定がぎっしりです。狭い階段を上がった2階には驚くほどの広々とした展示スペースがあり、高取町産の竹が随所にあしらわれ、伝統とモダンが溶け合った心地よい空間です。展示内容によっては土日に体験教室もあります。隣接して食事処「ひとやすみ」、少し南にはJAの倉庫を改装した「町屋カフェ noco noco」も、「夢創舘」を原点に、食と文化の新しい波が土佐街道に広がっています。
「町家のギャラリー輝」:10時~16時。水曜休館。TEL0744-52-1150(夢創舘)
|
|
|
《土佐街道の情報・問い合わせ》
観光案内所「夢創舘」
9時30分~16時30分。月曜休館。
〒635-0152 高市郡高取町上土佐20-2
TEL0744-52-1150
http://www4.kcn.ne.jp/~musoukan/