第137回 勝手に奈良検定
問題1 |
このお寺をもうじき彩るのは、さて何の花? 1.菊 |
正解は、2の「萩」。
まずは写真のこのお寺、いったいどこかおわかりですか?山門の後ろに広がる風景を見ると、どうやら少し高台にありそうです。向こうに見える山は生駒山のようですね。それに何より、風情のある石段と築地塀。これだけヒントがあれば、もうおわかりでしょう。ここは奈良市の白毫寺町にある「白毫寺」です。白毫寺といえば、山門や石段が続く参道を覆い隠すかのように伸びる萩で知られます。「秋の野に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種の花」(巻8-1537)、「萩の花尾花葛花なでしこの花女郎花また藤袴朝がほの花」(巻8-1538)。山上憶良が『万葉集』で詠み定まったという秋の七草の筆頭に来るのが萩の花です。
萩の花で名高いお寺といえば、ほかに唐招提寺や薬師寺などがあります。歴史を感じさせる築地塀や伽藍を背景に、勢いよく伸びる萩は、まさに古都奈良の秋を演出してくれるにふさわしい花と言えるでしょう。菊で知られるのは五條市の金剛寺です。かつては唐招提寺の長老の隠居寺として栄えた寺で、毎年11月3日には菊薬師会式と呼ばれる法要が行われます。小菊で荘厳された薬師如来をお祀りし、「善の綱」を通して結縁しようというもので、境内には色とりどりの菊が咲き乱れます。コスモスなら斑鳩三塔一帯に広がるコスモス畑や、般若寺、安倍文殊院、藤原宮跡周辺、仏隆寺周辺のコスモスがおすすめ。奈良の秋を、風に揺れる可憐な花が彩ります。花と古寺、そして万葉集を片手にめぐる奈良の旅もまた、楽しいですよ♪
問題2 |
河瀨直美監督が第50回カンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞した『萌の朱雀』は、当時、次のどこで撮影されたでしょうか。 1.五條市 |
正解は、4の「西吉野村」。
奈良市出身の映画監督、河瀨直美監督は、まさにカンヌの申し子。第50回では『萌の朱雀』で新人監督賞(カメラ・ドール)を史上最年少で受賞、また第60回では『殯の森』で審査員特別大賞(グランプリ)を受賞しています。その後も第62回で映画祭に貢献したとして「金の馬車賞」を女性として、アジア人として初受賞、さらに第66回では日本人で初めて審査員に選ばれました。ドキュメンタリー的な手法を借りた映像表現や世界観は、ヨーロッパ、とくにフランスで好まれ、その地位を国際的なものに押し上げました。
『萌の朱雀』(1997年公開)は、河瀨監督が撮った初めての35mm作品かつ、初の商業映画。生命力にあふれる萌え立つような山の緑に包まれた過疎の山村を舞台に、そこに生きる人間が運命に翻弄されていくさまを淡々と描いていきます。この映画が撮影されたのは、当時の西吉野村。西吉野村は2005年に大塔村とともに五條市に合併し、現在は五條市の一部となっています。過疎の村の唯一の希望であった鉄道の開通が結局は頓挫してしまうエピソードは、幻の鉄道といわれ、鉄道ファンに人気の高い、五新線にオーバーラップして描かれています。ちなみに、『殯の森』の撮影は、奈良市の東山中にある田原地区で行われました。同じ緑でもこちらは整然と畝を描く茶畑が非常に美しい作品となっています。世界の人々の心を動かした奈良映画、ぜひ一度ご覧ください。