第134回 勝手に奈良検定
問題1 |
写真は奈良県にある景勝地です。いったいどこでしょう。 1.鳴川渓谷 |
正解は、4の「瀞峡」。
瀞峡は吉野熊野国立公園内にあり、奈良県、三重県、和歌山県の3県にまたがる景勝地で、国の特別名勝となっています。両岸に切り立つ岩、風のない早朝にまるで鏡のように空や渓谷を映すコバルトブルーの川面…、その幽玄な風景は、山から流れ落ちる滝によって削られてできたもので、実に31㎞にもわたる大峡谷を形成しています。峡谷は奥瀞と下瀞とに分かれ、特に下瀞は巨岩や奇観が目白押し。その圧倒的な景観美は「瀞八丁(どろはっちょう)」と呼ばれています。瀞峡を訪ねるのなら、ぜひ体験してみたいのがジェット船や小型の川船での峡谷遊覧。初夏は新緑、秋は紅葉と、四季折々の風景を楽しむことができます。奈良県十津川村に宿を取れば、のんびりと陸路で向かうバスも出ており便利です。
鳴川渓谷は平群町にある渓谷。鳴川峠から流れる櫟原(いちはら)川沿いにあり、両岸に彫られた「清滝石仏群」の磨崖仏でも知られています。奥香落渓は奈良県曽爾村から三重県名張市にかけて広がる渓谷。室生山一帯の火山活動で形成され、屏風岩や兜岳(かぶとだけ)、鎧岳(よろいだけ)など柱状節理の荒々しい岩肌が壮観です。中には小太郎岩など名称がついた岩もあり、目を楽しませてくれます。みたらい渓谷は天川村にある景勝地。川沿いの遊歩道やエメラルド色の流れに掛かる吊り橋から見る渓谷は圧巻。激しく落ちる滝や岩を洗う川の流れなど、四季折々の自然のなかに水音がこだまします。
問題2 |
戦時中から長らく行方不明になっている新薬師寺の香薬師像。2015年、そのある一部分が発見されました。それはどの部分でしょう。 1.左手 |
正解は、2の「右手」。
奈良市高畑町にある新薬師寺は、聖武天皇の病の平癒を願って、天平19年(747)に光明皇后が創建したお寺です。天平時代の本堂(国宝)や、伐折羅大将などをはじめとする十二神将立像(国宝)などが知られ、築地塀の残る町並みの古刹として親しまれてきました。ところでこのお寺には、かつて「銅造薬師如来立像」、通称「香薬師(こうやくし)」と呼ばれる小像がありました。高さは約75㎝、飛鳥時代後期に造られた白鳳仏(7世紀後半~8世紀初め)で、わずかに微笑みをたたえた表情が愛らしい傑作でした。しかしこの像は数奇な運命をたどります。昭和18年(1943)、なんと3度目の盗難に遭い、今現在も行方不明となっているのです。
ところが2015年、この像の右手が見つかったという朗報がありました。実は明治時代に盗難に遭った際、右手は切断されてしまい、本体とは別に保管されていたのですが、本体は戦争中に盗難に遭い、その後、右手も寺から流出していたことがわかっていました。右手を保管していたのは神奈川県鎌倉市のお寺。2000年に個人から寺に寄贈されたものでした。右手は無事、新薬師寺に返還されました。右手の高さは8.6㎝。手のひらや指のふっくらとした曲線は、白鳳期の仏像の特色をよく表し、いまも行方不明の本体の素晴らしさをうかがわせています。現在奈良国立博物館「名品展 珠玉の仏たち」で展示されています。