第132回 勝手に奈良検定
問題1 |
2016年、重要文化財になったこの近代化遺産は何でしょう。 1.奈良少年刑務所 |
正解は、1の「奈良少年刑務所」。
2017年3月末、老朽化に伴い100年以上にわたる役割を終える奈良少年刑務所。一時は取り壊しも危惧されましたが、2016年の秋に国の重要文化財に指定され、その姿を後世に残すことになりました。写真は詰所のある正門。ロマネスク様式の、堅固でありながら柔らかな曲線が美しい建物は、監獄所の建築で知られる明治~大正に活躍した建築家、山下啓次郎が建てたものです。敷地内には附属工場や拘置監などがあり、建物は左右対称に整然と建てられています。また敷地をぐるりとめぐる壁はいかにも刑務所にふさわしい頑丈な造りです。
奈良少年刑務所は近代化遺産としてもここ数年、注目を浴びてきました。奈良にはほかにもたくさんの素晴らしい近代化遺産が点在しています。「旧生駒町役場庁舎」は、少年刑務所とは正反対に純和風の造り。昭和8年(1933)の建設で社寺建築に意匠をとった官庁舎でしたが、現在は「生駒ふるさとミュージアム」となっています。「JR旧奈良駅舎」は現在「奈良市総合観光案内所」に利用されています。昭和9年(1934)の建築で、旧生駒町役場庁舎とは少し趣を変え、社寺建築を洋風にアレンジした独特の外観です。「旧高市郡教育博物館」は明治36年(1903)の建築。平等院をモデルにしつつ、洋風の要素を多く取り入れた和洋折衷の建物です。現在は「今井まちなみ交流センター『華甍』」として今井町の観光拠点となっています。
問題2 |
大和路の旅を記した『大和古寺風物誌』。著者は誰でしょう。 1.和辻哲郎 |
正解は、2の「亀井勝一郎」。
古来多くの文人を魅了してきた奈良。近現代になってもそれは変わらず、作家、俳人、歌人、歴史学者、美術史家ら多くの文化人が奈良を訪れ、旅の記録を秀逸な文章に遺しています。『大和古寺風物誌』は、まだ戦時中である昭和18年(1943)に亀井勝一郎が書いたもの。飛鳥から奈良時代まで、仏教を中心にして日本の古代史を通観できる随筆集です。同じころ仏教的な思想に傾倒しはじめた亀井自身の思いとも重なり、日本古代の歴史や美術、宗教を知る格好の手引書としても読み継がれてきました。
和辻哲郎は『古寺巡礼』(大正元年〈1919〉、改訂版昭和22年〈1947〉)。博識に裏打ちされた直感や想像力が自由に巡る文章は、20代らしいみずみずしい感性に溢れています。白洲正子は『私の古寺巡礼』(1982)などの作品に奈良を描きました。同著では室生寺、長谷寺、東大寺などを訪ね、またお水取りの不思議などにも触れながら、随筆家としての感性をあますところなく発揮しています。堀辰雄『大和路・信濃路』は戦争末期に雑誌に連載された随筆的な旅行記。6回訪れた大和路をまとめたもので、2010年には代表作『聖家族』と融合されて映画『聖家族 大和路』として公開されました。