第119回 勝手に奈良検定
問題1 |
写真は奈良県で作られている、ある伝統工芸品の一部です。いったい何に挿して使うものでしょう。 1.お茶席の花器 |
正解は、2のお神酒の入れ物。
写真は「神酒口(みきぐち)」と呼ばれるもので、お神酒を入れる瓶子(へいし)に挿して使います。神酒口そのものは、素材やかたちを変えて全国各地に見られますが、その発祥は奈良県吉野郡の下市町だといわれています。写真は吉野の桧製。カンナで紙のように薄く削った経木の溝どうしを組み合わせて作られています。美しい光沢を放ち、複雑な幾何学模様を織り成すさまはまるで芸術品。実際に神社やお寺で使われているほか、奉納された絵馬にもお神酒に挿した神酒口を描いたものがあります。
現在も神酒口を生産する下市町は、吉野地方の杉や桧を用いた、さまざまな木工品の制作が継承されています。後醍醐天皇への献上品として喜ばれたという吉野箸や、それら献上品を載せた三宝(さんぽう)も、下市町の特産品です。
問題2 |
奈良県の名産品、三輪素麺(そうめん)。「素麺干し」が行われる季節はいつでしょう。 1.晩春 |
正解は、4の真冬。
食欲のない暑い夏でもツルツルとのど越しよくいただける素麺。その反対に、素麺が製造されるのは寒さで手もかじかむ厳冬期です。山の麓に糸のように細く真っ白な素麺が干される「門干し」は、三輪地方の冬の風物詩。こうして干すことで、山から吹き降ろす冷たい風が、麺の水分を飛ばして素早い乾燥を助けてくれるのです。現在では機械による室内乾燥がほとんどで、昔ながらの風景に出合うことは少なくなりました。
小麦粉に塩水を混ぜてよく練り、グルテンを生じさせ、撚りをかけてのばして熟成、さらにのばして門干しし、2日間をかけて作る三輪素麺。こうすることでコシの強い、茹でても伸びにくい麺ができあがります。さらにすぐに出荷せず木箱で梅雨を越すことで、さらに麺の特性を強くしています。
問題3 |
次の奈良大和路を代表する芸術家のうち、組み合わせが間違っているのはどれでしょう。 1.富本憲吉×陶芸家 |
正解は、2の「入江泰吉×洋画家」。
入江泰吉(1905~1992)は、奈良市生まれの写真家です。大阪の空襲で焼け出され奈良に戻ってきた後は、文化財を記録する思いで仏像を撮影、消えゆく奈良大和路の風景も撮り続けました。多くの人が思い描く奈良の風景は、入江泰吉作品によるものといっても過言ではありません。入江泰吉と関わりのあった「洋画家」といえば、大和路を愛した生涯の友、杉本健吉や須田剋太らが挙げられるでしょう。
1の富本憲吉は生駒郡安堵村(現安堵町)の出身。色彩豊かな文様を配した作品で知られ、人間国宝にもなりました。3の女流日本画家・上村松園は気品ある女性を描いた作品が有名。息子・松篁と孫・敦之も日本画家であり、3代の作品は松伯美術館で鑑賞することができます。4の杉岡華邨は吉野郡下北山村の出身。かな文字で叙情豊かな書の世界を築きました。