第117回 勝手に奈良検定
問題1 |
写真の人物にゆかりのある、紫陽花の名所といえば、次のどれでしょう。 1.岩船寺 |
正解は、4の久米寺。
橿原市にある久米寺は、推古天皇のとき、聖徳太子の弟の来目皇子(くめのみこ)が創建したと伝えられています。来目皇子は7歳のときに失明してしまいましたが、薬師如来に祈願すると治ったことから、これを祀る伽藍を造ったのが久米寺のはじまりといわれます。写真の人物は来目皇子、ではなく、この寺にまつわる伝説の主人公、久米仙人です。
伝説では久米仙人は、自身の神通力を以って東大寺大仏殿建立に貢献したと伝え、聖武天皇からこの地を賜り久米寺を開いたといいます。選択肢にあるお寺は、いずれも紫陽花の名所として知られています。岩船寺と浄瑠璃寺は、奈良と京都の県境に近い、京都府の当尾の里の石仏めぐりの起点・終点となっています。また矢田寺(大和郡山市)には、地獄めぐりをした満米上人の伝説が残されています。
問題2 |
『枕草子』に登場する「市は…」の段に書かれる「椿市」は、古代の市「海柘榴市」のことです。さて、それは現在のどの市町村にあるでしょう。 1.天理市 |
正解は、4の桜井市。
海柘榴市は、万葉の時代から知られる古代の「市」で、現在の桜井市金屋付近にあったと考えられています。この辺りは初瀬街道、山の辺の道などのいくつもの街道と、泊瀬川(大和川)の水路とが集まる水陸交通の要衝の地で、物資が多く集まりました。人々は物を交換したり、春や秋には男女が歌を歌って、恋の相手を探す歌垣も行われました。『枕草子』では「椿市」の名前で記されますが、これは市の周辺に椿が植えられていたからとの説もあります。
天理市丹波市町は上街道沿いに発展、中世末以降に市場として栄えました。奈良市には、平城京の東市(左京八条三坊)と西市(右京八条二坊)があり、農産物や海産物、布などさまざまなものが売られました。下市町の「下市」(下市町)では中世以降交易が盛んになり、毎月2日と7日には「市」が開かれました。江戸時代初期には日本初の商業手形「下市札」を発行していました。
問題3 |
世界遺産「古都奈良の文化財」を構成する8つの資産に含まれるのは、次のどれでしょう。 1.春日山原始林 |
正解は、1の春日山原始林。
春日山原始林は、奈良市の市街地の東に位置する春日山に広がる太古の森です。春日山は神の山として、古来枝木の伐採を禁じてきました。そのため、市街地のすぐそばにありながら、見事な手つかずの森が守られてきました。イチイガシ、コジイ、ツクバネガシ、アカガシ、テイカカズラ、ホオノキ、ブナなど、地形に応じてそれぞれの木々が生育しています。
世界遺産「古都奈良の文化財」は、平成10年(1998)に登録されました。東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡、春日山原始林の8つの資産から構成されています。資産全体として、古代日本の古都と文化の形成・発展を伝える貴重な証拠であること、それらが宗教や年中行事などを通していまも市民生活の中に生きていることなどが評価されました。