第113回 勝手に奈良検定
問題1 |
明日香にあるこの古墳、さてその形は、次のどれでしょう。 1.円墳 |
正解は、4の「八角墳」。
まず、写真の古墳について紹介しましょう。これは明日香村野口にある野口王墓(のぐちのおうのはか)です。宮内庁によって、檜隈大内陵(ひのくまのおおうちのみささぎ)として、天武天皇と持統天皇のお墓に比定されています。天武天皇は、壬申の乱(672年)で大友皇子を倒し即位した大海人皇子であり、持統天皇は天武天皇の皇后でした。天武天皇が薨去(こうきょ)した後に持統天皇として即位し、2人の長年の夢であった藤原京を造営しました。持統天皇が詠んだ「春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」の句がよく知られます。
この2人が眠る野口王墓は、上から見た墳丘の形が八角形をしています。古墳といえば前方後円墳や円墳などが頭に浮かびますが、八角形とは珍しいですね。実は7世紀半ば以降に造られた天皇の墓には、この八角形の墳丘をもつものがたいへん多くなります。飛鳥京が置かれた明日香村や周辺地域には、たとえば舒明天皇陵とされる段ノ塚古墳(桜井市)、文武天皇陵とされる中尾山古墳(明日香村)、斉明天皇陵とされる牽牛子塚(けんごしづか)古墳(明日香村)など、この時代の八角形墳が多くみられます。ではなぜ八角形なのでしょう。中国の古代思想では、天に通じ、国を治める者にふさわしいかたちこそが、八角形であると考えられていました。古墳の造営にあたり、この思想を反映させたとみられています。
奈良県は全国でも有数の巨大古墳造営地。桜井市の纒向(まきむく)古墳群には卑弥呼の墓と言われる箸墓があり、天理市の柳本古墳群には三角縁神獣鏡で知られる黒塚古墳や、崇神(すじん)天皇陵に比定される行燈山古墳などがあります。さらには奈良市の若草山から佐保・佐紀にわたるエリアには佐紀盾列(さきたたなみ)古墳群、広陵町から河合町にかけての一帯には一大古墳公園として整備されている馬見丘陵古墳群などがあります。また天理市や、橿原市、御所市、葛城市などには、数えきれないほどの円墳や横穴墓からなる群集墳が造られました。古墳のかたちも円墳や方墳、前方後円墳、前方後方墳、長方形墳、八角形墳、横穴墓など、実にバラエティー豊かです。夏休みの古墳見学もよし、少し涼しくなってからの古墳散策もよし、奈良の古墳に足を運んでみませんか。
問題2 |
夏休み、博物館や資料館では恒例の企画が行われています。「大和を掘る」といえば奈良県立橿原考古学研究所附属博物館。では「50㎝下」のキーワードで毎年企画展を行っているのは、さて、次のどこでしょう。 1.葛城市歴史博物館 |
正解は、2の「桜井市立埋蔵文化財センター」。
奈良県はいわずと知れた考古学のメッカ。日本の歴史は奈良県からはじまったといっても過言ではなく、県内のいたるところから遺跡が発見されています。そのため、奈良県や、県内の市町村では発掘調査に大忙し!さらに掘るだけではなく、貴重な発掘成果を速報展や企画展として公開してくれています。夏休みの自由研究に、博物館や資料館はかっこうの場所。涼を求めながら、奈良県の古くて深~い歴史を目の当たりにしてはいかがでしょう。問題にもある奈良県立橿原考古学研究所附属博物館では、「大和を掘る33~2014年度発掘調査速報展」として郡山城天守台や條ウル神古墳など30遺跡の出土品を展示。9月6日までの開催です。
正解の桜井市立埋蔵文化財センターでは、毎年「50㎝下の桜井」として、前年度の発掘調査の成果を展示する速報展を行っています(2015年は8月25日まで)。桜井市といえば、箸墓古墳や纒向(まきむく)遺跡で知られ、〝卑弥呼の里〟とも称されるエリア。速報展では纒向遺跡の建物跡や谷遺跡の絵画土器などが展示されます。1の葛城市歴史博物館は、古代豪族葛城氏が栄えた地に建つ歴史博物館。古代寺院や古墳に関わる企画展が多数開催されています。この夏は「太田古墳群の調査~発掘調査成果速報展」を開催(8月30日まで)。古墳群の遺構や出土品の写真など、臨場感あふれる展示で古墳の謎に迫ります。
3の歴史に憩う橿原市博物館は、新沢千塚古墳群の展示を中心に、橿原市の歴史や文化を紹介しています。今年の夏季特別展は「遮光器土偶(しゃこうき)がやってきた!」(9月13日まで)。驚くべき数の土偶が出土した橿原遺跡の土偶と東北地方の遮光器土偶を展示、縄文時代の橿原と東北地方とのつながりをわかりやすく展示しています。夏休みが終わったあとも、珍しい展覧会が開催されます。4の香芝市二上山博物館では「鋳物師(いもじ)の里・五位堂~近世・近代産業遺産を考える」を開催予定です(9月19日~11月23日)。 かつて鋳物産業が栄えた地、香芝。とくに五位堂鋳物師は中世末から近世はじめに台頭し、多くの作品が残されています。二上山といえば石器の材料のサヌカイトで知られますが、中世・近世の奈良の知られざる歴史を知る貴重な機会です。
問題3 |
夏においしいあの食べ物。奈良県ではその「タネ」の育成が盛んで、なんと生産量は全国第1位。さて、いったい何のタネでしょう。 1.紫とうがらし |
正解は、4の「スイカ」。
奈良県でスイカ、とは意外に思われるかもしれません。実は奈良県のスイカの種子の生産量は全国第1位。全国に出荷されているスイカの8~9割は、奈良県産のスイカのタネから育てられていますから、ふだん口にするスイカのルーツは、奈良にあると言っても過言ではありません。
かつては奈良県でも食用のスイカが育てられ、出荷されていました。江戸時代後期にはほぼ全国で栽培されていたというスイカですが、明治時代にアメリカから入ってきた品種と交雑が進み、さらに大正時代、奈良県の農業試験場で積極的な品種改良が行われました。そこで誕生したのが「大和スイカ」です。奈良県の風土はスイカの生育によく適し、大和スイカは全国的なブランドに成長しました。しかし昭和30年代になって徐々にイチゴ栽培に切り替える農家が増え、現在では田原本町を中心として種苗生産がほとんどとなっています。
1の紫とうがらし、2のひもとうがらしは、奈良県がブランド化している大和野菜の1つ。紫とうがらしは濃い紫色が特徴で、ほとんど辛みのないとうがらしです。アントシアニンを含み、熱をかけるとさっと薄い黄緑色に変色します。ひもとうがらしは、その名の通り、紐のように細長いかたちをしたとうがらしです。古くから自家食用として栽培されている奈良オリジナルの野菜で、甘い味わいが人気です。また3のナスといえば、同じく大和野菜ブランドの大和丸なすがあります。こちらはふっくらとよく肥り、締まった果肉が特徴。どんな料理でも煮崩れないため、高級料理店でも重宝されます。夏が旬の奈良の野菜、ぜひ堪能してみてください。それぞれの調理方法は、「ふるさとの味」に詳しく掲載しています。