第101回 勝手に奈良検定
問題1 |
男たちが燃え盛る松明を担ぐこの行事、さて、なんというお祭りでしょう。 1.八幡神社・春日神社ほうらんや火祭 |
正解は、1の「八幡神社・春日神社ほうらんや火祭」。
橿原市東坊城町の八幡神社と春日神社では、毎年8月15日、勇壮な「ほうらんや火祭」が行われます。ごうごうと音を立てて燃え上がる大松明を鉢巻きに浴衣姿の男衆が担ぎ、境内の建物を壊さんばかりに暴れまわるもので、昭和57年(1982)に奈良県の無形民俗文化財に指定されました。現在春日神社では13時頃から、八幡神社では15時頃から行われています。
この祭りには大小合わせて16の松明が登場しますが、大松明はきわめて巨大なずん胴型で、麦わらや笹竹などをすだれ状に編んだ青竹で巻き、しめ縄で縛ったもの。直径1.5m、高さ3m、重さ約450kg以上もあります。祭りの盛り上がりは、やはり大松明の練りです。松明はまず火をつけないまま境内をぐるりと1周し、その後、神前で点火され、境内の隅から隅までを2周、もの凄い勢いで練ります。燃え上がる火が境内の木々の葉を焦がしても、社殿の屋根にぶつかりそうになってもお構いなし。これが済むと燃え尽きるのを待って拝殿の前で取り壊し、最後に拝殿前に置かれた小松明に点火して終了です。
2の往馬大社の火祭りは、毎年体育の日の前日の日曜日に開催される行事で、上と下に別れた氏子の競争を神事とする”勝負祭り”。古くから天皇の大嘗祭の火きり木を献上してきた火の神ならではの勇壮な行事です。奈良県の無形民俗文化財に指定されています。3の龍田大社の風鎮大祭は毎年7月の第1日曜に行われます。この祭りのクライマックスは、男たちが上半身裸で臨む手筒花火と、拝殿前に”ナイアガラ”のように縄を渡した花火の、2種類の奉納花火。境内に美しい火の粉が舞い散ります。墨坂神社の火祭りは毎年8月3日に行われます。夏には珍しいトンドの行事で、七夕飾りなどを焚き上げます。
問題2 |
夏といえば怪談ですが、音を立てて飛びまわり、出くわしてしまった人が高熱に襲われるという奈良の妖怪は、次のうちのどれでしょう。 1.姥火(ウバガヒ) |
正解は、4の「じゃんじゃん火」。
じゃんじゃん火は火の玉の妖怪で、白毫寺と大安寺に別々に埋葬された心中の男女の霊や、天理の城跡をさまよう武将の霊が火の玉になったものと言われています。その名のとおり、「じゃんじゃん」と音を立てて飛びまわり、やり過ごすのに苦労します。出くわしてしまった人は高熱に襲われてしまうと言われています。
1の姥火は、こちらも火の玉妖怪です。神社の境内の灯油を毎晩盗んでいた老婆が、死んで火の玉になったものです。雨の晩、1尺ほどの大きさの火の玉が神社や辺りを飛びまわります。生駒市に出没するとか。2のガゴゼは「元興寺」と書き、まさに奈良市の元興寺に出没していた鬼のことです。寺で悪事を働いた者の霊魂が鬼と化し、鐘楼に巣食い、人を捕まえては喰っていたそうです。道場法師に調伏され血を滴らせながら逃げる後を追えば、不審ヶ辻の辺りで消えたと言われています。3の旧鼠は鼠の妖怪です。奈良に出没する旧鼠は赤と白と黒のまだら模様をしていたといいます。猫と交わり、産まれた子猫たちを死んだ母猫のかわりに育てたものもいれば、産まれた猫を食べてしまった凶暴なもの、なかには人間の娘と交わったのもいたそうです。
このほか奈良には、野迫川(のせがわ)村に出没する「ゲゲゲの鬼太郎」でおなじみの砂かけばばあや、山の方から勢いよく飛んでくるという奈良市押熊(おしくま)町の二ツ池火の玉や、熊野街道を行く人をとって喰う伯母峰(おばみね)の一本足(いっぽんだたら)という妖怪がいます。12月20日に熊野街道を歩くときは注意が必要です。なぜなら、僧侶に封印された一本足が、その日だけは人を喰っていいといいと許された日なのです。近隣にお住まいの方は、十分ご注意ください。
問題3 |
毎年8月15日、奈良の夏の夜空に浮かび上がる「奈良大文字送り火」の火文字。さて、大の字が点灯される山は次のうちどれでしょう。 1.春日山 |
正解は、2の「高円山(たかまどやま)」。
標高432mの高円山は、奈良市東部、春日山の南にあり、穏やかな山容を呈しています。古くから万葉集に詠われたのをはじめ、歌枕として数々の歌に用いられ、親しまれてきました。この山腹で毎年8月15日に行われる「奈良大文字送り火」は昭和35年に始まったものです。18時50分から飛火野で行われる慰霊祭は、戦没者慰霊と世界平和を願い、神式と仏式とでつとめられ、神仏の宗教家が共に集う珍しいものとなっています。
20時、山腹に設置された火床に一斉に点火されると、真っ暗な夜の闇のなかに静かに「大」の字が浮かび上がります。その大きさは日本最大級を誇り、第1画目は109m、第2画目は164m、第3画目は128mもあります。ちなみに108という火床の数は人間の煩悩の数にちなむもの。「大」の字は市内の各所から見えるので、自分だけの場所を探して心静かに眺めるのもいいかもしれません。
1の春日山は人が立ち入ることを許さない古来の神山で、現在「春日山原始林」として、世界遺産「古都奈良の文化財」の構成要素の1つになっています。3の生駒山は、奈良と大阪との境にある山で、山頂に建ち並ぶテレビ塔が目印です。生駒山に沈む夕日は、奈良の人々の心の風景ともいえるでしょう。4の若草山も同じく奈良を代表する山。1重目から3重目まで重なるように見え、頂上には清少納言『枕草子』にも登場する鴬塚古墳があります。また山頂からの眺めは新日本三大夜景の1つに数えられ、夏の夕涼みには格好の場所となっています。