第94回 勝手に奈良検定
問題1 |
神主と僧侶が一緒に参拝するこの風景。さて、いつ行われる行事でしょう。 1.1月2日 |
正解は、1の「1月2日」。
まず、この写真がいったい何の写真かおわかりでしょうか。これは春日大社に興福寺の貫首(かんす)らが詣でる「日供始式並興福寺貫首社参式」(にっくはじめしきならびにこうふくじかんすしゃさんしき)のようすです。「日供始式」とは毎日行われる朝夕のお供えを本年も奉仕できるように祈念する式です。引き続き行われるのが「興福寺貫首社参式」です。
春日大社と興福寺は、勢力を振るった藤原氏の氏神、氏寺であり、いわば一体といっていい関係でした。1月2日10時、まず皆が本殿に向かいます。「日供始式」終了後、続いて興福寺の貫首ら僧侶が中門下に座し、唯識論を奉唱します。その後、場所を移し、若宮神社前で般若心経を奉唱します。神社で読経の声を聴くのはいまでは珍しいことですが、明治維新の前までは普通に行われていたことでした。これは神仏習合の名残をとどめる珍しい行事です。
春日大社と興福寺は、そのほかの行事でもいくつも関わりが見られます。まず2の「5月の第3金曜・土曜」は薪御能(たきぎおのう)の日です。夕刻から、興福寺南大門で行われる能に先立ち、両日とも11時より、春日大社で呪師走りの儀(第3金曜)・御社上りの儀(第3土曜)が行われます。また3の「12月15日~18日」は「春日若宮おん祭」です。かつて興福寺は祭りの主催者でした。7月の流鏑馬定(やぶさめさだめ)、12月初旬の馬長児(ばちょうのちご)僧位僧官授与式にはじまり、17日のお渡り式など、いまも興福寺との関わりが随所に見られます。奈良の伝統行事は、お祭りの本来の姿を残すべく、いまも継承されています。
問題2 |
毎年1月に冬の奈良の夜空を焦がす若草山焼き。この山焼きに先立って、麓の野上神社では祭儀が行われます。さて、このとき聖火行列を先導する法螺貝を吹くのは、次のどのお寺でしょう。 1.東大寺 |
正解は、3の「金峯山寺(きんぷせんじ)」。
南都のお寺の行事には法螺貝が付きもの。毎年1月の第4土曜日に行われる若草山の山焼きに際しては、吉野の金峯山寺の修験者が法螺貝を吹きながら、聖火行列を先導します。かつて春日山周辺は、山岳仏教の修験場として栄え、その名残として、いまも数々の石仏が遺されています。修験道のお寺として名高い金峯山寺は、二月堂のお水取りで読み上げられる神名帳にも一番最初に登場するほど、東大寺とゆかり深いお寺であり、修験場である山を舞台に行われる行事でけん引役を果たすのにも、深い意味があるのです。
松明は春日大社境内の水谷神社で点火され、若草山山麓の野上神社まで運ばれます。ご神火は野上神社のかがり火に点火され、春日神職による祝詞が読み上げられます。さらに興福寺、東大寺の僧侶による読経のなか、山麓中央の大かがり火に点火され、花火の打ち上げの後、いよいよ本格的な山焼きが始まります。このように、一見イベントのように思える山焼きは、春日大社、興福寺、東大寺、金峯山寺というように、神道、仏教、そして修験道が一体となった祭儀を経て行われている、実に奥深い伝統行事なのです。
鎌倉時代の建長7年(1225)には行われたことがわかっている山焼き。興福寺と東大寺の境界争いが発端であるとよくいわれますが、その起こりには定まった説はありません。寛文12年(1672)の『南都記』によれば、現在若草山山頂にある鴬塚(うぐいすづか)古墳は、当時「牛墓」と呼ばれており、そこから「化生(けしょう)のもの」が抜け出してこないよう阻止するため、毎年山を焼いたといいます。さらに古く、寛平7年(895)、東大寺東南院の聖宝大師理源が大蛇を鎮めるために山を焼いたとも伝わっています。
問題3 |
清酒発祥の地として、また〝錦の里〟として紅葉の美しさでも知られる正暦寺は、ある行事でもよく知られます。さて、それは次のうちのどれでしょう。 1.万灯供養 |
正解は、2の「人形供養」。
桃の節句も終わった毎年3月9日14時から、清澄の里・正暦寺で人形供養が行われます。本堂には全国からこの1年に納められた人形やぬいぐるみなどが並び、長いこと大事にし、捨てることができなかった人形たちに、感謝の思いを込めて法要が行われ、大護摩供養が厳修されます。
奈良のお寺には、ほかにも「供養」を目的とする行事がいくつかあります。1の万灯供養は東大寺で行われるもので、正しくは「万灯供養会」と呼ばれます。毎年お盆の8月15日の19時~22時、大仏殿周辺に願いが書かれた2500基もの灯籠が並べられ、厳かで幻想的な光景のなか、大仏殿で厳かに法要が営まれます。 3の筆供養は、毎年春分の日(2014年は3月21日)に菅原天満宮で行われる「筆まつり」です。12時から筆塚に護摩が焚かれ、筆造りの祖に感謝し、使用した筆を護摩檀に投げ入れて供養します。また菅公にあやかって書の上達を祈願します。
4の「竹供養」は大安寺の行事です。これは古代中国の「竹酔日」にちなむもので、中国では、陰暦5月13日(6月23日ごろ)に竹を植えればよく育つと言われてきました。毎年6月23日の13時から竹供養の儀が行われ、虚無僧による尺八奉納演奏、竹林加持のほか、銘竹の植樹などを行い、生活の中に溶け込んでいる竹へ感謝の念を捧げます。当日はがん封じ笹酒祭りとして、大安寺名物笹酒のふるまいもあります。