第89回 勝手に奈良検定
問題1 |
奈良県南部にある、ある植物の名前がついたこの滝。さて、何という滝でしょうか。車で30分ほどのところには、暑さも吹き飛ぶスリリングな観光スポットがあります。 |
正解は、笹の滝。
奈良県内の清流「やまとの水」にも選ばれている滝川渓谷の笹の滝は、「日本の滝百選」にも選ばれているたいへん美しい滝です。日本有数の長さを誇る「谷瀬のつり橋」から、国道168号を南へ約12km、風屋集落からさらに東の山中へ約12km入ったところにあります。
美しい直線をつくってまっすぐに流れ落ちる滝水は、その落差約32m。滝つぼからは水しぶきや細かな霧が立ち昇り、夏でもひんやりと涼しい絶好の避暑スポットです。また、道路から滝つぼまでは、まるでジャングルのような原生林の中を進みます。最後は巨岩の中をすり抜ける鎖場もあり、ちょっとした探検気分も味わえ、子どもたちも大喜びすること間違いなし。谷瀬のつり橋と合わせて、親子で楽しむことができます。
十津川村には、ほかにも滑車を手で引きながら川を渡る野猿(やえん)や、大小さまざまなつり橋、うっそうとした巨木に囲まれた熊野の奥の院・玉置神社など、夏休みに家族で楽しめる見どころがたくさんあります。1日の締めくくりは、十津川温泉郷へ。源泉掛け流しのお湯で、1日の汗を流し、心も体もリラックスしてはいかがでしょう。日本一大きな村で、夏休みを満喫してみませんか。
問題2 |
吉野川の源流の森に育つ、「生きた化石植物」とも呼ばれる植物の名前は、さて、何でしょう。 |
正解は、トガサワラ。
マツ科のトガサワラは、モミやツガに似た常緑針葉樹で、条件が整えばときに樹高30mにも達します。日本固有種で、紀伊半島の南部と高知県の一部のみに見られ、とくに奈良県南部の大台ケ原に多く分布しています。ヨーロッパや日本では、トガサワラの化石も発見されていることから、「生きた化石植物」とも呼ばれています。
吉野川の源流の村である川上村には、このトガサワラが育つ豊かな森「三之公天然林」があります。村の90%を森林が占める川上村ですが、人の手が入れられていない天然林はその30%に過ぎません。川上村ではこの森を「水源地の森」として購入、生態系を守るとともに、吉野川の最初の一滴を生む自然の素晴らしさに触れる学習の場として活用しています。
この水と森をめぐる豊かな生態系について学べるのが、川上村「森と水の源流館」です。最初の一滴が森を抜け、里山を抜け、町を抜け、やがて海に注いでいくようすを、源流の森シアターをはじめとするわかりやすい展示で教えてくれます。また年2回の源流の森ツアーをはじめ、さまざまな体験プログラムを通して自然の大切さを知ることもできます。夏休みの自由研究の題材探しに、出かけてみてはいかがですか。
問題3 |
幕末、奈良を舞台に尊王倒幕の兵を挙げた志士たちの集団を、さて、何と呼ぶでしょう。 |
正解は、天忠組(天誅組=てんちゅうぐみ)。
幕末、ペリーが黒船でやってきて以来、尊皇攘夷派や倒幕派、反対に幕府をなお支えようとする佐幕派など、たくさんの思惑が入り乱れ、日本は大きく揺れました。そんななか、純粋な尊皇攘夷の考えの下に公卿・中山忠光を中心に結成され、明治維新のさきがけとなったのが天忠(誅)組です。
文久3年(1863)8月17日、天忠(誅)組は孝明天皇の大和への行幸と天皇親征の先陣となるべく、幕府の直轄地を治めていた五條代官所を襲い新政府を打ち立てます。成功したかに思えたのもつかの間、翌日、反対派がクーデターを行い、支援していた攘夷派の公卿たちが失脚、天皇の行幸が中止になると、一夜にして逆賊となり、各藩から追討を受けることになりました。その後のおよそ40日間はひたすら転戦と敗走とを繰り返し、東吉野村鷲家口でそのほとんどが戦死してしまいます。
無謀ともいえる最期ではありましたが、その純粋さゆえ、いまもなお、多くの幕末ファンの心をひきつけてやまない天忠(誅)組。県内には墓所をはじめとする史跡やゆかりの地がたくさん残っています。義挙から150年の今年は、とくにゆかりの深い東吉野村・五條市・安堵町・十津川村などの4市町村をはじめとし、各地でさまざまなイベントや展示などが開催中。また8月~9月にかけても、記念行事や講演会などが催されます(詳細はイベントカレンダーを参照)。