第56回 勝手に奈良検定
問題1 |
11月14日、この神社で行われる「酒祭り」には、全国各地から醸造元関係者が集います。何という名前の神社でしょうか。 |
正解は、大神神社(おおみわじんじゃ)。
大神神社では、毎年11月14日、新酒の「酒祭り(醸造安全祈願祭)」が行われます。祭神・大物主大神(おおものぬしのおおかみ)や少彦名神(すくなひこなのかみ)は、「酒の神様」「醸造の祖神」として人々の信仰があつく、『日本書紀』や『万葉集』にも記され、崇神(すじん)天皇の御世、国家運営と人心の一新をはかるために三輪山の神々に美味しいお酒をお供えし、感謝のお祭りを催したとあります。また「味酒(うまさけ)の」という言葉は、大神神社の神山「三輪山」にかかる枕詞となっています。
この時期は新酒の仕込みに入る季節で、全国の酒蔵・酒造業者や杜氏たちが参列します。酒祭りの前日にあたる11月13日には、拝殿と祈祷殿の正面に、150kgもある大杉玉が掲げられます。全国各地の酒蔵元の軒先に杉玉が吊るされているのを見かけますが、あれは、お祓いを受けた酒蔵・酒造業者に、三輪の神杉を丸く束ねた「しるしの杉玉」が授与されたものです。
当日は、祝詞奏上の後、4人の巫女によって「うま酒みわの舞」の舞が奉納されます。拝殿前には、全国の醸造元から奉納された酒樽が、うずたかく積み上げられ、参拝者にも振舞われます。
問題2 |
五條市にある榮山寺。吉野川を見下ろす小高い場所に、八角円堂(国宝)が建っています。この八角円堂は、藤原南家の祖といわれるある人の建立と伝えられていますが、この人は誰でしょう。 |
正解は、藤原仲麻呂(ふじはらのなかまろ)。
榮山寺は、藤原鎌足の孫・不比等の長男である藤原武智麻呂(むちまろ)の建立(719年)です。八角円堂は、寺を開いた父・武智麻呂の菩提を弔うため、藤原仲麻呂が建立したと伝えられています(721年)。
貴族である藤原南家に生まれた仲麻呂は次第に政界で頭角を現し、叔母にあたる光明皇后の信頼を厚く受けていました。天皇からは、恵美押勝(えみのおしかつ)の名前を与えられるなど格別の待遇を得ました。恵美押勝とは、人民を「恵む美」が優れ、乱を防いで「押し勝つ」功績を称える名称です。しかし光明皇太后の死去後は急速に権力を失い、藤原仲麻呂の乱(恵美押勝の乱)を起こして、近江の国で捉えられ、斬殺されました。
八角円堂は、外観は八角ですが、内部は4本の柱で支える四角の形をなし、他の円堂建築にはない特徴となっています。本堂には、木造薬師如来坐像や十二神将が安置され、その西隣に建つ鐘楼には、青銅の梵鐘(国宝)がおさまっています。小野道風(おののとうふう)の書とされる銘文が刻まれ、精巧で均整のとれた鐘身(しょうしん)は、京都・神護寺などと並ぶ「平安三絶の鐘」として知られます。平城遷都1300年を記念して、11月21日まで本尊の薬師如来坐像(重文)が特別開帳されています。期間中、八角円堂内の拝観もできます。
問題3 |
世界最古の木造建築が建ち並ぶ法隆寺。数知れない寺宝の中に、最古の木版印刷物といわれるものがあります。これは何と呼ばれるものでしょうか。 |
正解は、百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)。
印刷の歴史は、ドイツのグーテンベルクによる印刷に始まるというのが、一般的によく知られているところです。1450年、グーテンベルクが金属活字を用いて大量印刷を可能にした発明は、火薬・羅針盤とともにルネサンスの三大発明といわれています。
しかし、世界最古の印刷物とされているのは、法隆寺に伝わる「百万塔陀羅尼」です。764年に藤原仲麻呂の乱を平定した称徳天皇が、戦死した多くの兵士の菩提を弔うために6年の歳月をかけて作りました。陀羅尼を100万巻印刷し、小塔に分けて納め、10万基ずつを元興寺・法隆寺・東大寺・西大寺・興福寺・薬師寺・大安寺・四天王寺・川原寺・祟福寺の10寺に奉納しました。
版を凸状に彫りその上に紙を載せて印刷した陀羅尼を、小さな木製の三重塔に納めてあります。現在、これらの塔はほとんどが散逸しましたが、法隆寺には4万数千基が残っています。平城遷都1300年を記念して、法隆寺秘宝展がら11月30日まで開催されています。通常は拝観することができない秘宝の数々が、西院伽藍の東側にある大宝蔵殿で、特別に展示されています。