第55回 勝手に奈良検定
問題1 |
現代に伝わるさまざまな古典芸能や伝統文化。その源のほとんどは、奈良1300年の歴史の中にたどることができるといっても過言ではありません。毎年10月8日、この神社で行われる翁舞(重要無形民俗文化財)は、能楽の起源といわれています。さて、何という神社でしょうか。 |
正解は、奈良豆比古神社(ならづひこじんじゃ)。
奈良市奈良阪町にある奈良豆比古神社は、かつては奈良坂春日社と呼ばれていたように、古くから春日大社との関係が深く、石灯籠の中には春日社と刻まれたものもあります。
拝殿は春日造が三殿並び、中殿に平城津彦神(奈良豆比古神/ならづひこのかみ)を、左殿に光仁天皇の父である施基親王(志貴皇子/しきのみこ)を、右殿に施基親王の子、春日王を祀っています。
この奈良豆比古神社に古くから伝わるのが、毎年10月8日の宵宮に舞われる「翁舞」。町内の講の人々によって演じられる舞は、能の起源・猿楽の雰囲気をよく残すといわれています。千歳(せんざい)と呼ばれる男の子の舞や、3人の翁が天下泰平や五穀豊穣を寿(ことほ)ぐ三番叟(さんばそう)などで構成され、芸能史的に大変貴重なものといわれています。
問題2 |
葛城・金剛山系のふもとに佇(たたず)むこのお寺は、役行者(えんのぎょうじゃ)草創と伝えられています。龍にまつわる伝説をもつこのお寺は、何という名前でしょうか。 |
正解は、草谷寺(そうこくじ)。
五條文化博物館近くの山あいにひっそりと佇む草谷寺は、役行者の草創と伝わる小さな山寺です。昔、金剛山から暴れ出て田畑を荒らし、村人を困らせていた龍がいました。行者が数珠を投げつけて退治し、龍の体を3つに切り刻みました。村人は死んだ龍のたたりを怖れて、龍頭寺、龍胴寺、龍尾寺を建てましたが、3寺を併せて「草谷寺」ができたといわれています。
本尊の薬師如来坐像は藤原時代の作、薬師如来立像と不動明王坐像は平安時代の作で、いずれも国の重要文化財です。ほかに、日光・月光両菩薩立像、聖観音菩薩立像、十二神将像などが伝わっています。通常は非公開ですが、平城遷都1300年を記念して、10月25日(月)から31日(日)の期間限定で、13時~16時のみ、特別に開帳されます。
問題3 |
「第62回正倉院展」に出展されている「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんごげんのびわ)」は19年ぶりの出展ですが、この琵琶の表面のバチ受け部分には、ある動物が描かれています。その動物とは何でしょう。 |
正解はラクダ。
今年の正倉院展で、19年ぶりの出展となる「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、北倉に伝わる聖武天皇御遺愛品として、正倉院宝物を象徴するような名高い存在です。五絃琵琶はインドが起源とされ、現存品としては世界唯一のもの。この琵琶の表面のバチ受け部分には、ラクダとその背中で四弦琵琶を持つ胡人が、美しい螺鈿で表されています。奏でる琵琶の音に応えて、ラクダが後ろを振り向いた顔や、いまにも動き出しそうな4本の足など、ラクダの表情や特徴が生き生きと描かれています。
このほか、今回の正倉院宝物には多くの動物たちが登場します。たとえば称徳天皇の献納品と伝わる「銀壺(ぎんこ)」の勇壮な狩猟場面には、鹿、羊、イノシシ、ウサギなどをはじめ、ペガサス(有翼馬)や獅子が、また敷物「白橡綾錦几褥(しろつるばみあやにしきのきじょく)」には、南国らしい巨樹を中心に荒々しい獅子が織り込まれています。
さらにリアルなのは、スッポンをかたどった容れ物「青斑石鼈合子(せいはんせきのべつごうす)」です。背中側がふた、腹側が容れ物になっている容器で、琥珀をはめた深紅の目や北斗七星を刻んだ甲、手足のしわや爪など、まるで生きているかのように見えます。「第62回正倉院展」は10月23日(土)~11月11日(木)まで、奈良国立博物館で開催されます。