第49回 勝手に奈良検定
問題1 |
天理市にあるこの神社は、物部氏ゆかりの日本最古の神宮。ここに伝わる国宝の御神宝は、今回の平城遷都1300年祭を記念して行われる「奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」で公開されます。さていったい何でしょうか。 |
正解は、七支刀(しちしとう/ななつさやのたち)。
この刀を所蔵する写真の神社は、天理市の石上(いそのかみ)神宮です。七支刀は4世紀における朝鮮半島と日本の関係を残す最古の文字資料として、昭和28年に国宝となりました。普段は非公開ですが、平城遷都1300年祭を記念して(1)5月17日~21日、(2)5月24日~28日、(3)5月31日~6月4日、(4)6月7日~11日の計20日間で、特別公開されます(事前申込制)。
七支刀は、刀身の表裏に61文字の銘文が金の象嵌(ぞうがん)で施された、全長74.9cmの鉄剣。「六叉の鉾」(ろくさのほこ)の名で伝えられたように、刀身の両側から3本ずつ枝が互い違いに伸びた形をしており、武器というよりは祭祀的な意味あいの強いものであったと考えられています。『日本書紀』によると、4世紀に百済から倭に「七枝刀」が贈られたとあり、関連があるのではないかといわれています。
石上神宮(いそのかみじんぐう)は布留(ふる)山の西北麓に鎮座する古社。『日本書紀』に見られる神宮は伊勢神宮と石上神宮だけで、その記述から日本最古の神宮といわれます。祭神は布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)で、ご神体は布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)に宿る神霊です。軍事氏族であった物部氏が祭祀していたため、大和朝廷の武器庫の役割もあったといわれます。
問題2 |
奈良市大安寺にあるこの仏像は、観音菩薩としては珍しい憤怒(ふんぬ)の形相をしています。大食いの動物の如く、あらゆる諸悪を排除するといわれるこの観音菩薩は何という名前でしょうか。今回の平城遷都1300年祭を記念して行われる「奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」で特別公開されます。 |
正解は、馬頭観音立像。
平城遷都1300年祭を記念した「奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」の一環として、4月1日~5月9日まで十一面観音立像とともに特別同時公開されます。観音菩薩は、衆生を救済するために相手に応じて様々な形体に変化し、いろいろな姿に変身するといわれています。基本となる聖観音(しょうかんのん)ではない観音は、変化(へんげ)観音とよばれ、あらゆる人を救う意味から超人的な姿で表されることが多く、馬頭観音もその1つです。
馬頭観音は、聖観音・千手観音・十一面観音・如意輪(にょいりん)観音・准胝(じゅんてい)観音とともに六観音の1つでもあり、他の観音が女性的で、穏やかな表情をしているのに対し、目を吊り上げ、牙を剥き出した憤怒相をしています。馬が草をむさぼり食べるように、諸悪を食いつくしてくれる仏さまといわれています。
大安寺の馬頭観音立像は、補修された部分が多いものの天平時代の作といわれ、馬頭観音としては日本最古の像です。一般には、頭上に馬をいただくものが多いなか、馬頭がなく、胸飾りと足に蛇を巻き付かせ、腰に獣皮をつけていることから、馬頭観音の原初の形とも考えられています。
問題3 |
東大寺の伝統行事「お水取り」を天平勝宝4(752)年にはじめたといわれる実忠和尚(じっちゅうかしょう)ですが、ある文化遺産を造営したことでも知られます。今回の平城遷都1300年祭を記念して行われる「奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」でも公開される、奈良市にあるこの史跡は何と呼ばれているでしょうか。 |
正解は、頭塔(ずとう)。
「頭塔」は『七大寺巡礼私記』に、僧玄ぼうの首塚とあり、『東大寺要録』には、神護景雲元(767)年、東大寺権別当実忠が造営したと記録されています。1300年祭を記念して、4月24日~5月9日、10月9日~11月7日の特別公開期間中は、予約なしで見学ができます。
基壇が一辺32m、高さ10mのピラミッド形。43の仏龕(ぶつがん)と浮彫石仏27体が、立体曼荼羅のように配置されています。仏教では本来、「塔」は釈迦の骨“舎利”を納めた卒塔婆(そとうば)のことで、インドでは円形の土饅頭型でした。仏教が東に広がるにつれて、中国の楼閣建築と相まったものに変わり、日本では五重塔や三重塔のような形になっていきましたが、頭塔はインドの形式を直接的に伝えた貴重な文化遺産として知られます。
反藤原勢力の要、吉備真備(きびのまきび)と僧の玄ぼうおよび2人を起用した橘諸兄(たちばなのもろえ)に対し、藤原広嗣(ひろつぐ)が起こした“藤原広嗣の乱”(740年)。九州・唐津で若い命を絶った藤原広嗣の怨霊が、宿敵の僧玄ぼうを直撃し、玄ぼうの首が飛来して塚となったといわれています。