第19回 勝手に奈良検定
問題1 |
毎年10月、奈良市内の神社で17歳以上の少年たちが中心となって演じられるこのお祭りは、何という神事でしょう。 |
正解は「題目立(だいもくだて)」。
題目立は毎年10月12日、奈良市上深川町の八柱神社(やはしらじんじゃ)で400年以上も守り継がれている伝統芸能で、秋祭の宵宮(よいみや)で奉納される神事です。かぞえ歳17歳の少年たちが中心となって演じられ、この日から少年たちは大人の仲間入りをすることになります。「題目立」には、源平の武将を題材とした「厳島(いつくしま)」、「大仏供養(だいぶつくよう)」、100年以上演じられていない「石橋山(いしばしやま)」の3曲が伝わっていますが、最近は「厳島」だけが演じられています。
少年たちは狩衣姿(かりぎぬすがた)で弓を持ち、それぞれ自分の配役の歌を独特の節回しで順番に歌っていきますが、動作はほとんどありません。宮座の元服行事と芸能の混じり合った古風な民俗行事であり、能の源流を伝えるものとして、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
問題2 |
天理市の黒塚(くろつか)古墳の発掘で33枚が出土した鏡は、何と呼ばれるものでしょう。 |
正解は「三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)」。
黒塚古墳は4世紀ころに造られた全長130mの前方後円墳です。1998年、黒塚古墳から木棺に鏡面を向けて立てた状態で、33面の三角神獣鏡が発見され、全国考古学ファンの注目を集めました。1か所の古墳からこれだけの鏡が出土したことは極めて珍しいことでした。三角縁神獣鏡とは、縁の断面が三角形で裏面に神仙(しんせん)や竜などの文様があるものをいいます。
中国の歴史書「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」には、魏の皇帝が邪馬台国(やまたいこく)の女王・卑弥呼(ひみこ)に銅鏡100枚を贈ったとあり、この鏡にあたるのではないかともいわれています。邪馬台国の所在地の謎ともからんで、古代の真相はベールに包まれたままです。
問題3 |
高句麗の僧・曇徴(どんちょう)が日本に伝えたとされる、奈良の伝統工芸品は何でしょう。 |
正解は「奈良墨(ならすみ)」。
『日本書紀』によると、610年、高句麗(こうくり)の僧・曇徴が日本に紙と墨の製法を伝えたとされています。その後、各地で墨の生産が下火になっていくなかで、奈良の墨は寺社の需要を背景に作り続けられました。藤原氏の氏寺として栄えた興福寺では、室町時代、同寺二諦坊(にたいぼう)に造墨手を置き、かなりの量が作られていたといわれています。
戦国期には、織田信長に墨100挺を献上したという記録もあるほど、奈良の墨は有名になっていきます。秀吉の時代、日明貿易で従来の胡麻油に代わって菜種油が伝来し、南都油煙(奈良墨)は奈良の名産となって大いにもてはやされました。江戸時代には幕府の直轄地となり、奈良奉行の指導のもと30軒ほどの墨屋が奈良町に点在していた記録が残されています。