第12回 勝手に奈良検定
問題1 |
吉城川の流れを引き入れて造られ、写真のような池泉回遊式庭園を有する庭といったらどこでしょう? |
正解は依水園。
春日奥山から流れ出し、戒壇院の南を流れる吉城川の水を引き入れて造った、奈良を代表する庭園。17世紀後半の延宝年間(1673~81年)から吉城川の流れを利用した晒場(さらしば)が設けられ、奈良晒(ならざらし)をなりわいとした豪商、清須美氏がつくった建物が依水園に残っています。庭園は、二つの池泉回遊式庭園が組み合わされたもので、若草山や高円山を借景として取り入れ、池の中の島には東大寺大仏殿の礎石なども置かれています。
昭和50(1975)年には、国の名勝に指定されました。敷地に入ってすぐに寧楽(ねいらく)美術館があり、高麗や李朝の陶磁器や、中国の青銅器などが展示されています。カキツバタの名所としても知られますが、東大寺、奈良国立博物館、興福寺、春日大社など、観光名所の中心地にあるにもかかわらず、静かで落ち着いた雰囲気を味わうことができる場所です。
問題2 |
時代によって形式がかわる古代寺院の伽藍配置。 |
正解は塔と金堂。
7世紀後半までに創立された寺院では、仏舎利を納める塔が最も重要と考えられたため、金堂が塔を囲むように東、西、北側の三方に建つ伽藍様式でした。飛鳥寺がこの形式であったことから、飛鳥寺式伽藍配置と呼ばれます。その後、塔と金堂は並列の関係で伽藍内に配されるようになりました。法隆寺式伽藍配置です。
法隆寺西院の伽藍配置は、中門から左右にのびる廻廊に囲まれた中に、東に金堂、西に五重塔を配し、廻廊の北側外に講堂を置き、その東西斜め前に鐘楼や経蔵が配されています。金堂は現存する世界最古の木造建築で、胴張りの太いエンタシスの円柱、深い軒を支える雲斗と雲形肘木など飛鳥様式の特徴をよく表しています。
問題3 |
鎌倉時代に復興され、伝統的な和様に加えて大仏様の新技法を取り入れた興福寺の現存する建造物は何でしょう? |
正解は北円堂。
藤原不比等の一周忌に際して建立された興福寺でしたが、治承4年の平重衡(しげひら)の焼き討ちで全焼し、鎌倉初期に再建されました。しかしその後、江戸時代の大火や明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により、衰退の憂き目をみましたが、近年では往時の風景を取り戻しつつあります。
北円堂は現在、興福寺では一番古い建物です。復興は前代を踏襲した建築様式である和様で行われましたが、構造強化に工夫がなされ、大仏様の新技術を取り入れています。ふだんは中に入ることはできませんが、毎年4月末から5月初めにかけてと11月初めに特別開扉が行われています。本尊の木造弥勒菩薩坐像(国宝)は運慶のすぐれた表現技術を伝える仏像です。