第5回 勝手に奈良検定
問題1 |
甍の波の向こうに見える塔、さて、どこのお寺の塔でしょう。 |
正解は法隆寺。
西院伽藍(がらん)の五重塔(国宝)は、金堂とともに現存する世界最古の木造建造物で聖徳太子発願の寺。607年に建立されたと伝えられる法隆寺(若草伽藍)は、670年、雷によって火災に遭い、ことごとく焼け落ちてしまったことが『日本書紀』には書かれている。その後、金堂、五重塔、中門、回廊の順に再建され、現在目にする西院伽藍が、8世紀のはじめくらいに完成したと考えられている。現在の塔の高さは基壇の上から31.5m。最下層の内陣には、奈良時代初頭につくられた塑像(そぞう)群もある。
ところで、法隆寺のある斑鳩(いかるが)の里は、美しい塔の姿を望める場所として散策コースに最適。法隆寺(五重塔)、同じく太子建立7か寺のひとつ法起寺(三重塔、国宝)、法輪寺(1975年再建)の3塔が、畑や家々の向こうにちらちらと見え隠れする道をのんびり歩いてみるのはいかが?法隆寺や中宮寺などゆっくり見ながら回れば、約5km、6時間くらいのコース。
問題2 |
奈良県には、京都府宮津市、山形県高畠町のあるものとともに、「三大もの」に数えられるものがあります。さて、それはどこの何? |
正解は桜井市・安倍文殊院の木造騎獅(きし)文殊菩薩(重要文化財)。
鎌倉時代の快慶の作と伝えられている。日本三文殊の一つとして数えられるが、残る二つは京都府宮津市の知恩院の文殊と、山形県高畠町大聖寺の亀岡文殊。安倍文殊院の文殊菩薩は、騎獅の名前の如く獅子に乗った姿で彫られているが、その高さなんと2m、目の前にすると圧倒されるほどの量感だ。文殊菩薩は学業を守護する菩薩で受験生の人気も抜群。
安倍文殊院は645年の創建と伝えられる。境内は季節の花々で彩られ、境内の中にある展望台からは桜井の町が見渡せる。また境内には古墳時代末期の古墳が2基残っている。こちらはそれぞれ入り口からのぞき込むようなかたちで見学できる。横穴式石室の、石積みも美しい古墳だ。
問題3 |
映画の舞台としてしばしば銀幕に登場する奈良。では奈良が生んだ天才数学者、岡 潔をモデルにしたとされる映画のタイトルは、何? |
正解は「好人好日」(こうじんこうじつ)。
昭和36(1961)年の渋谷実監督作品。数学者、岡 潔がモデルとされる主役の尾崎等を演じたのは、故 柳 智衆(りゅう ちしゅう)である。映画は、娘(岩下志麻)の縁談話に、尾崎が受賞した文化勲章盗難の騒ぎが絡み…。奇行で知られ、世間的には変人として通っていた尾崎。しかしそんな風評を離れた父と娘との情愛を軸に描いた、あたたかく、しかしほろ苦い映画である。
実際の岡 潔は、明治34(1901)年大阪生まれ。奈良女子大学の数学教授として学究生活を送り、数学における当時の重要な未解決問題を解いたことで世界的な評価を受け、昭和35(1960)年、文化勲章受章、昭和53(1978)年に78歳の生涯を閉じた。映画と同じく世間の常識や評価などにはまったくとんちゃくしなかったという。数々の名著も残る。