第152回 勝手に奈良検定
問題1 |
奈良公園の鹿たちにあげられる「鹿せんべい」の原料は次のうちどれでしょう? 1.大豆 |
正解は、2の「米ぬか」。
鹿せんべいは奈良市内にある5つの工場で、米ぬかと小麦を原料につくられています。せんべいといえばしょうゆや砂糖などで味付けされたものを想像しますが、鹿せんべいには一切味付けがされていません。調味料を使った味付けは、鹿にとって有害になるからです。逆に人が鹿せんべいを食べても身体に害はありませんが、奈良公園で販売されている鹿せんべいは人の食用に検査・登録・販売されたものでないため、食べることは禁止されています。鹿せんべいがどんな味なのか気になる人は、製造している工場に見学に行くことで試食できるかもしれません。奈良市内にある武田俊男商店は大正6年(1917)創業の昔ながらの鹿せんべい工場で、定休日の日曜をのぞき工場内を見学することができます(要事前予約)。
鹿せんべいの歴史は江戸時代にまで遡るといわれ、奈良公園では寛文12年(1672)には鹿せんべいが販売されていたと記録が残ります。『大和名所図会』の春日の茶屋には、鹿せんべいらしきものを鹿に投げている人が描かれています。奈良の鹿愛護会の前身「神鹿保護会」が結成されてから、鹿せんべいの販売にも決まったルートができました。現在、「鹿せんべい」の名称は奈良の鹿愛護会の商標登録となっており、愛護会が活動するための重要な資金財源の1つです。なぜかというと、鹿せんべいを束ねる十字に巻かれている薄紙に注目してみましょう。証紙は奈良の鹿愛護会が発行しているもので、10枚1束150円で販売されている鹿せんべいの売り上げの一部が、愛護会の活動資金になります。奈良公園を訪れた際には、愛護会の証紙が巻かれた鹿せんべいを購入して、鹿たちとのふれあいを楽しみましょう。
問題2 |
往馬神社で新年に行われる神事は? 1.火祭り |
正解は、4の「追鶏祭」。
往馬大社で毎年1月1日の年明けに行われる神事に追鶏祭があります。通称「とりおい」とよばれる神事で、早朝の暗闇のなか行われます。祝詞の奏上の後、2人の神職が行灯を手に声をかけ、鶏を追う所作をしながら境内の高座を北から南、南から北へと3回行き来します。そのつど神職は「ホイホイホイ」とかけ声をかけながら、「これはどこの鶏追い、大勝院の鶏追い」「これはどこの鶏追い、宝勝の鶏追い」「これはどこの鶏追い、往馬大社の鶏追い」と詞を唱えます。他方、北座と南座でも総代など神社の世話人が、神職の動きに合わせて同じように広場を駆けます。素朴な所作であっという間に終わる神事ですが、伝統神事として生駒市の無形重要文化財に指定されています。
追鶏祭がいつごろから始められた神事なのかは不明ですが、伝承が残っています。神功皇后が三韓征伐で出兵する際、往馬大社で馬を休めることがありました。皇后は鶏に、早朝時を告げて兵たちを起こすように命じます。しかし翌朝、鶏が鳴かず(鳴くのが早過ぎた説と遅過ぎた説の両方あり)出兵が遅れたことを怒った皇后は、鶏を竜田川に流してしまいました。流された鶏は、川の下流の龍田神社の神に助けられたと伝わります。問題の追鶏祭以外の選択肢も往馬大社で毎年行われている神事です。火祭りは毎年10月の体育の日の前日の日曜日、大とんどは1月15日、英霊祭りは4月3日に行われます。古くから「火の神」として崇敬の篤い往馬大社らしい、火に関する神事が多いのが特徴的です。