第143回 勝手に奈良検定
問題1 |
池の周りに咲き誇る桜・桜・桜…。ここはかつて大きなお寺だったところです。芭蕉も句に詠んだこのお寺は、さてどこでしょう。 1.唐招提寺 |
正解は、2の「内山永久寺」。
内山永久寺は天理市にある廃寺です。明治の初めに廃仏毀釈によって寺は廃れ、現在は「大和名所図会(ずえ)」にも描かれた浄土式回遊庭園の大きな池しか残されていません。名前の通り、鳥羽上皇の勅願により、永久年間(1113年~1117年)に建立されました。中世には石上神宮の神宮寺として、また興福寺の末寺として栄え、近世になると東大寺や法隆寺などと肩を並べるように隆盛し、伽藍の豪奢なことから「西の日光」の異名もとりました。
境内跡地には「内山やとざましらずの花ざかり」の芭蕉の句碑が建っており、この桜は村人しか知らないだろうと、満開の花を慈しむ句が詠まれていますが、寺は山の辺の道沿いにあり、池の周りにたくさんの桜が咲き誇る春には、大勢の人が訪れる花の名所となっています。なお芭蕉は、そのほかのお寺にも、それぞれ次の句を残しています。
唐招提寺「若葉して御目の雫(しずく)拭はばや」
東大寺「水取りや氷の僧の沓(くつ)の音」
世尊寺「世にさかる花にも念佛まうしけり」
問題2 |
東大寺二月堂の修二会では、毎年3月13日の午前1時ごろ、井戸から香水(こうずい)を汲み、観音に捧げる「水取り」が行われます。ところでこの水は、次のどこから流れてくると言われているでしょうか? 1.石川県 |
正解は、3の「福井県」。
府県名で問われると、意外に難しく感じた人も多かったのでは? 水取りは、毎年3月13日の午前1時ごろから行われる修二会の中の大切な行事です。二月堂下の「閼伽井屋(あかいや)」と呼ばれる小さな建物には、「若狭井(わかさい)」と呼ばれる井戸があり、ここから香水(こうずい)を汲み上げて、本尊十一面観音にお供えするのです。そのため、修二会のことを通称して「お水取り」とも呼ぶようになりました。
この井戸の「若狭井」という名前からもわかるように、奈良で汲み上げる井戸の水は、若狭(福井県)から流れてくると言われ、小浜市の遠敷川の上流の鵜の瀬(うのせ)では、毎年3月2日に「お水送り」の行事も継承されています。これにはエピソードがあります。二月堂では行の無事を祈り、全国から神々の参集を乞いましたが、若狭国の遠敷明神(おにゅうみょうじん)は、釣りに夢中になり、うっかり遅れてしまいました。そのため遠敷明神はおわびのしるしにと、二月堂の脇に清水を湧き出させました。地中から水が湧き出るときに黒と白の鵜が飛び出たといわれ、現在も閼伽井屋の屋根には鵜が置かれています。小浜から二月堂まで、約10日を掛けて流れてくるという水。壮大なロマンに思いを馳せながら、今年のお水取りをご覧になってみては?