早起きして訪れたい。奈良のとっておき 寺社の“朝”体験
更新日:2018年12月13日
やわらかい日の光、冷たく澄んだ空気。
チュンチュン。ほら、あちこちからスズメのかわいい鳴き声が。
ここは、とある奈良の寺社。朝もやの中、境内はまだ静まり返っています。
さて、〝なら女子旅〟第6回は、「奈良の朝観光のススメ」をピックアップ。
朝の観光といっても色々あるけれど、ここは奈良らしく、毎朝、僧侶や神官によって厳かに続けられる“勤行”や“礼拝”を体験してみましょう。
「興味はあるんだけど、旅先ではゆっくり寝ていたいなぁ…」
そうですよね。でもね、ホラ、“早起きは三文の徳”っていうじゃありませんか。
スッと目覚めたら、これ幸い。
まだまだ眠たい目をこすりながらも、思い切って出かけてみてください。
お経や祝詞がチンプンカンプンでもOK。
寺社の静謐な空間に身を置いて、目の前の神仏に祈るだけ!
終わった後は頭もシャッキリ、気分爽快!
ね、シンプルでしょ?
心が洗われる、朝ならではの不思議な体験。
三文といわず、三百文くらい徳をもらっちゃいましょう❤
※寺社仏閣は祈りの場です。敬虔な気持ちを持ってお参りしましょう。
目次
1.はるか山並みに、高い空に、溶けていく声明に感動! 長谷寺の「祈りの回廊」
「南無愛宕大権現 南無大師遍照金剛」
ピーンと張り詰めた空気の中、力強い僧侶の声が、山々に響き渡っていきます。
桜、牡丹、紅葉と、境内を彩る草花が美しいことから「花の御寺」とも呼ばれる長谷寺は、奈良を代表する名刹の一つ。
ここで、大人女子にぜひトライしてもらいたいのが、開創以来1300年間、絶え間なく続けられてきた“祈り”。
朝の勤行「祈りの回廊」です。
――――晩秋、朝6時30分。空はまだ薄闇。
すでに開いている仁王門から入山し、初瀬山の中腹にある本堂を目指します。
勤行が行われる本堂は、門から399段続く重要文化財の「登廊(のぼりろう)」を登りきったところ。
これが思った以上に大変で(笑) 。ヒーフー言いながら登ると、秋冬でも汗ばんできます。
でも油断は大敵! 秋冬は、勤行中に冷えてくるので、厚めの靴下とひざ掛けはマストですよ。
受付後は、首からかける輪袈裟と経本が渡され、外陣にしつらえられた席で待機します。
本堂には大小さまざまの立派な額がズラ~リ。
中には江戸時代初期の額もあるのだとか。歴史の古さと信仰の厚さが伺えますね。
――――朝7時00分。本堂外に設けられた舞台に、朝日が差し込んできました。
大勢の僧侶たちが内陣に入られ、「祈りの回廊」スタートです。わ~ドキドキ!
「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時!!」
ひゃあ、予想以上に読経の声が大きくってビックリ。
10~20代の青年僧が多いからか熱気がスゴくて、一生懸命さが伝わってきます。
中には寒いのに頭から湯気が出ている僧侶も!
読経の最中は、太鼓がドンドンとひっきりなしに叩かれるので、さっきまで落ち着いていた気分も、次第にハイテンションになってきますよ~。
ご本尊は大きな十一面観音菩薩さま!!像高10m超!! 実際に目の当たりにすると、あまりの大きさにビックリ。
内陣での読経が終わると、僧侶たちは本堂舞台に移動。はるか四方を取り巻く山々に向かってズラリと並び、一斉に手を合わせて、歌うように声明を唱え出します。
わぁ~。これこそ、某有名鉄道会社のキャンペーンポスターで、道行く人の目をくぎ付けにしたワンシーン!
まだ年若い僧侶たちが自らを律し鍛えて、難しいお経を覚え、毎朝早起きして、人々の平和や健康を一心に祈る。
これが1300年間、来る日も来る日も続けられてきたのかと思うと、仏教には詳しくなくても感動でウルウルきちゃうかも。
勤行後は、一般参拝客が入山できる時間までの1時間ほど、境内を自由に見学できます。
いつもは人でごった返す登楼も、季節によっては独り占め状態(笑)
春と秋(2018年は12月3日まで)は、重要文化財の本尊・十一面観音菩薩立像の特別拝観(有料)があり、御足に触れることができます。真下からグイッと仰ぎ見る観音像は圧巻!
特別拝観期間中は「結縁の五色線」という、観音さまと仏縁が結べるステキな腕輪もいただけますよ。
また12月31日~2019年1月3日は、登廊の各段両側に灯がともされる「観音万燈会(まんどうえ)」も開催!期間が合えばぜひ拝観してみてください♪♪
<長谷寺 DATA>
TEL | 0744-47-7001 |
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住所 | 奈良県桜井市初瀬731-1 |
アクセス | 近鉄長谷寺駅から徒歩約20分 |
体験時間 | 約40分~60分間 4月1日~9月30日は6:30~(通常参拝は8:30~) 10月1日~3月31日は7:00~(通常参拝は9:00~) 予約不要、開始30分前から本堂窓口で受付 1月1日は休止 |
体験料金 | 参拝料500円 |
駐車場 | 70台 |
<おすすめコース>
近鉄長谷寺駅
長谷寺
まずは西国三十三所 第八番札所の長谷寺にお参り。毎日正午になると、本堂横の鐘楼で、時刻を告げるほら貝が吹かれます。容姿端麗のご利益がある(!?)牡丹の花守500円や、カワイイ起き上がり御守500円もゲット❤
※写真はイメージです。草餅は持ち帰りのみで、お茶は付きません。
総本家 寿屋
近所でも評判の老舗草餅店で、アツアツの焼きたて草餅と、もっちり生の草餅を食べ比べ!濃い緑色をしたお餅には地元でとれるヨモギがたっぷり❤甘さ控えめの粒あん入りで各120円。
9:00~17:00、不定休
3匹の看板猫ちゃんズもいるよ♪(写真は15歳のQちゃん)
法起院
西国三十三所番外札所で、境内には「葉書」の由来になった木・多羅葉樹(たらようじゅ)が。葉っぱの裏には、参拝者がペンなどで引っ掻いてつけた文字がびっしり。
願い事を書くと叶うとか…( *´艸`)
やまとびとのこころ店
ジャズが流れる町家カフェ&セレクト雑貨ショップで、2回目のおやつタイム♪長谷寺認定スイーツの「HASEドーナツ」も気になるけれど、蒸したての女夫(めおと)饅頭をオーダー。
白いじょうよ饅頭と赤い酒饅頭で、粒あん・こしあんを二重にサンドしたスイーツで、江戸時代の伊勢参りの旅人に愛されたお菓子を復刻させたんだって。
抹茶のセット940円。
10:00~17:00、火・水曜休み(祝日及び18日は営業)
湯元井谷屋
今宵お世話になるのは、長谷寺エリアを代表する老舗旅館。大浴場のある新館もいいけれど、和の情緒たっぷりの本館もステキ。(写真は本館離れ「曙」)地下600mから噴出する自慢の天然温泉でゆっくりした後は、季節の会席料理を堪能しよう。
1泊2日12,000円~。
長谷寺
朝の勤行「祈りの回廊」を体験!湯元井谷屋
清々しい気分でお宿に戻って朝ごはん。奈良名物の茶粥や、アツアツの湯豆腐を食べてパワーチャージ完了!2.ほかにもあるよ! 早起きして訪れたい。奈良のとっておき 寺社の“朝”体験
1.特別開帳時に訪れたい!神秘的な修験道の祈りに心震える、金峯山寺蔵王堂の「朝座勤行」
桜で有名な吉野山。その中腹にひときわ大きくそびえ立つ大寺院が金峯山寺です。
飛鳥時代に修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)によって開かれたといい、約1300年たった今も数多くの修験者(山伏)が修行を行う、日本屈指の山岳信仰の聖地。
平成16年にユネスコの世界文化遺産に登録され、一躍有名になりました。
高さ20.3mもある国宝の仁王門。巨大な2体の金剛力士像が出迎えてくれます。ド迫力~!
勤行が行われる蔵王堂も国宝。高さ約34m、四方約36mと、木造古建築では東大寺大仏殿に次ぐ大きさを誇ります。
平安時代から消失と再建を繰り返し、今の堂宇は1592年に豊臣秀吉の力によって再建されたものだとか。
金峯山寺蔵王堂の勤行はけっこう賑やか。読経に合わせて太鼓や鐘を叩くだけでなく、修験道らしくほら貝のソロパートがあったり、修験者たちが両手指で印(修験道や密教の修法の一つ)を結んだりして、ミステリアスな雰囲気が漂います。
読経スピードは割と速いので、経本の文字を目で追うのが精いっぱいですが、集中して一緒に唱えるとすごい一体感…!
秋冬は勤行後に蔵王堂を出ると、東の空にキラキラとのぼる朝日が見られますよ。胸いっぱいにキリッと冷えた山の空気を吸い込んで、フ~っと深呼吸。身体の中の悪いものをすべて吐き出しちゃってください。
普段の勤行も神秘的ですが、わざわざ早起きして訪れるなら、ぜひご本尊・金剛蔵王権現の特別開帳時を狙いたいもの。
青色が目にも鮮やかな3体の金剛蔵王権現は、なんと高さ7m! 日本最大の秘仏といわれ、眼光鋭く、眉を吊り上げ、片手片足を勢いよく持ち上げた立ち姿が、とにかくカッコイイんです☆
特別開帳時は、朝の勤行の後に一度退場して、8時半から蔵王堂に再入場。一人ひとり、障子で仕切られた個室に入り、1分ほど金剛蔵王権現とご対面できます。
そうそう、最近はこの「くまぶしくん」目当てで、金峯山寺を訪れる人が増えているとか…。
金峯山寺とホテル日航奈良とのコラボテディで、山伏装束が激カワ❤
一目惚れ買い続出の人気ものです。気になったらぜひおうちに連れて帰ってね。
<金峯山寺 DATA>
TEL | 0746-32-8371 |
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住所 | 奈良県吉野郡吉野町吉野山 |
アクセス | 近鉄吉野駅下車、徒歩すぐのケーブル千本口駅よりケーブル代行マイクロバスで15分(片道360円)。 ケーブル吉野山駅下車、徒歩10分 ※吉野山ロープウェイは運休中(運休期間未定) |
体験時間 | 約40分~50分間 6時30分~(通常参拝は8時30分~) 予約不要、開始10分前に蔵王堂で受付 |
体験料金 | 無料 ※ご開帳時のみ拝観料1000円 |
駐車場 | なし(観光駐車場を利用) |
2.思わず背筋がピーン!身も心も100%浄化されるような、橿原神宮の「朝拝」
神社を訪れるなら朝がいいって言いますよね。
理由は単純に参拝者が少ないからだけじゃなくて、朝は神域が清らかな陽の気で満ちあふれ、神社の持つパワーを最大限にいただけるからなんですって。
せっかくなら神職や巫女と一緒に「朝拝」に参加してみましょう。
『古事記』『日本書紀』に記述されている大和三山のひとつ・畝傍山(うねびやま)のふもとに佇む橿原神宮は、明治23年に創建され、日本の第一代天皇・神武天皇と、その皇后の媛蹈韛五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと)を祀っています。
広さはなんと東京ドーム約10個分! 森に包まれた神域内には大きな池や紅葉もあって、お散歩にピッタリですね。
一の鳥居から南神門までは、真っすぐに伸びた美しい表参道を歩きます。両側には橿の並木が続き、日本建国の聖地にふさわしい、奥ゆかしさと特別な何かを感じ取ることができる場所です。
南神門をくぐると参集所と神楽殿、その奥には畝傍山をバックに壮麗な外拝殿(げはいでん)が並びます。見たことがないくらい広大な空間に、圧倒されること間違いなしですよ。
外拝殿で参拝後、今年の干支が描かれた「大絵馬」前でパチリと一枚☆
さて、ここから先は、一般参拝者は立ち入りNGの聖域。
朝拝は外拝殿の奥にある儀式殿で行われます。釣り灯篭が美しい長い回廊を進んでいくと、自然と背筋が伸びて厳かな気持ちに…。
中に一歩踏み入ると、空気がまるで違ってビックリしちゃいますよ。
伊勢神宮からまるごと移築された儀式殿で、神職や巫女たちと一緒に「大祓詞(おおはらえのことば)・神社拝詞(じんじゃはいし)」を奏上。
祝詞って、漢字が多い上にズラズラと長くて言葉も独特なので、一般人には「???」ですが、書いた紙をいただけるので、がんばって読んでみましょう。ありがたいことに全文ルビ付きです。
最後は内拝殿に移動して、もう一度参拝。
ここまで来ると、ご神気というか、気高い雰囲気がビリビリ伝わってきますよ。柏手を打つと、パアァァンと予想以上にクリアに響き渡るので、一瞬ゾクッときちゃいます。
内拝殿の屋根越しからは、幣殿の金色に輝く千木・鰹木と、京都御所から移築された本殿の屋根を垣間見ることができます。
金色のトビである金鵄(きんし)をモチーフにした「勝ち守」1000円や、三本足の八咫烏(やたがらす)にちなんだ「やたがらす健康守」500円など、橿原神宮ならではのお守りもゲットするのを忘れずに。
<橿原神宮 DATA>
TEL | 0744-22-3271 |
---|---|
住所 | 奈良県橿原市久米町934 |
アクセス | 近鉄橿原神宮前駅から徒歩約10分 |
体験時間 | 約20~30分間 8時30分~45分の間に開始(時間は若干前後します) 予約不要、外拝殿にいる神職または巫女にお声がけください 毎月1・11・21日(月次祭)および、祭典のある日は休止 |
体験料金 | 無料 |
駐車場 | 約800台(有料) |