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近代化遺産ある記

vol.19 旧奈良市水道計量器室&奈良少年刑務所(旧奈良県監獄署)

掲載日:2015年12月14日

北山十八間戸を訪れたとき、そのはす向かいにある不思議なレンガ造りの建物が気になった方も多いのでは?これが「旧奈良市水道計量器室」です。大正11年(1922)、市の水道が創設された際に建てられました。奈良阪浄水場からの水量を計量していた施設と考えられています。現在は稼動していませんが、市民生活の近代化を物語る建物の1つなのです。

また、そのすぐ北にそびえる美しいレンガ塀をもつモダンな建物も、わが国の貴重な近代化遺産です。明治41年(1908)、日本の刑事制度を世界に誇示するため、明治政府によって造られた五大監獄の1つ、「旧奈良監獄署」です。大正11年(1922)には奈良刑務所と改称し、さらに戦後すぐ奈良少年刑務所と改称しました。同時代、ほかに4つの監獄署が設計されましたが、現在全容を残すのは、奈良少年刑務所のみとなっています。

チェックポイント!

正面には「水」のデザイン?

さりげなさがハイカラです

旧奈良市水道計量器室の正面には、「室器量計道水市良奈」と右から左に読む門標が掲げられています。門標を中心に、幾何学的なデザインが施されており、「水」の字をあしらったようなデザインも見受けられます。細かいところに設計者の遊び心が感じられます。

まるでヨーロッパ!

バラ窓や双塔をもつ正門

ロマネスク建築の意匠を用いて設計された、堅牢かつ優美な外観の奈良少年刑務所。ヨーロッパの古城や大聖堂を思わせます。詰め所のある正門も、丸い屋根の双塔や中央を飾るバラ窓など、じつに豪奢な装飾。このほとんどが当時の受刑者により施工されたそうです。

逃さず行きたい 年に1度の公開日

毎年9月の「奈良矯正展」

用途上、内部に入って見学を、とはいかない奈良少年刑務所ですが、年に1度一般公開日が設けられています。それが毎年9月に行われる「奈良矯正展」。この日のみ、一般見学が可能です。施設を見学するツアーの実施のほか、受刑者の絵画や文芸に触れたり、本館前の広場で行われているバザーをまわったりと、さまざまな催しに参加できます。

建てたのはこんな人!

奈良少年刑務所(旧奈良監獄署)/山下啓次郎(やましたけいじろう)

明治、大正期に活躍した建築家が山下啓次郎です。帝国大学で奈良ホテルの設計者である辰野金吾のもと建築を学びます。欧米視察で欧州の監獄署を視察した山下は、千葉、長崎、金沢、鹿児島、奈良の五大監獄署の設計を担当しました。ちなみに、ジャズピアニストの山下洋輔氏は、啓次郎の孫に当たります。

旧奈良市水道計量器室 DATA

住所奈良市東之阪町
アクセスJR・近鉄奈良駅から青山住宅行きバスで般若寺下車、徒歩約2分
建造年大正11年(1922)
一般公開柵の外側から見学自由

奈良少年刑務所(旧奈良県監獄署) DATA

住所奈良市般若寺18
アクセスJR・近鉄奈良駅から青山住宅行きバスで約10分、般若寺下車、徒歩約3分
設計者山下啓次郎
建造年明治41年(1908)
一般公開毎年9月に「奈良矯正展」を開催、所内の一部を一般公開

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