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近代化遺産ある記

vol.9 旧奈良県立図書館

掲載日:2015年1月9日

奈良県指定文化財

城跡の一角に建つ威風堂々の明治建築

近鉄橿原線から見える石垣に歴史の風格を感じる郡山城。筒井順慶や豊臣秀長らとゆかり深いその城内の一角にあり、ひときわ目立つ堂々とした建物が旧奈良県立図書館です。当初は明治41年(1908)、奈良市興福寺境内・講堂跡に日露戦争戦捷記念の建物として竣工されました。昭和43年(1968)、県立図書館の新設にともなって郡山城跡に移築・保存され、現在は大和郡山市教育関連施設として活用されています。

奈良公園周辺の明治建築は、奈良県庁舎が建てられた明治27年以降、和風建築と洋風建築とを融合させる方針で設計されました。旧県立図書館も骨組は純洋風、外観は和風で内装は洋風、屋根は木造桟瓦葺というように、和洋折衷のスタイルです。建坪は本館で約650㎡。中央に入母屋造(いりもやづくり)2階建の主棟があり、左右に切り妻造(きりつまづくり)平屋建の翼部が付きます。旧県立図書館は復元された追手門をくぐって右手に、左右に翼を広げた堂々とした佇まいをみせています。

チェックポイント!

正面玄関の車寄せ

外観の和と内装の洋

建物正面の車寄せは唐破風。寺院建築などでよくみられる形状です。曲線の屋根を支える4本の大面取角柱は太くしっかりしていて、土台は礎石。このような伝統的建築物でありながら、玄関ホールは洋風の木の扉、窓枠にはガラスがはめられています。中に入ると石段があり中央のホールになります。階段や窓などの内部には西洋建築の技が施されています。

主棟から広がる翼部

日本古建築のシンメトリー

建物は主棟と、左右翼部にあたる平屋建てからなります。そのため、正面から見ると左右対称に。これは平等院鳳凰堂を模して造られています。図書館だった頃、建物中央のホールの左右には閲覧室がありました。白漆喰の壁に高い天井、たくさんの窓と扉。窓には吊り下げ式のカーテンがかけられています。移築された際、改造されたところもありますが、明治建築の面影がみられます。

窓から光の差し込む階段

美しい木のフォルム

玄関から中央ホールに入ると2階に続く木製の階段があります。高い天井を見上げれば、東側の壁には大きな窓が。陽の光を受けた木の手すりが階上へ伸び、中央の踊り場から両側に分かれ美しいフォルムを描いています。明治時代の面影を残す館内はドラマの撮影に使われたことも。

建てたのはこんな人!

橋本卯兵衛(はしもと うへえ)

安政2年(1855)生まれ。大阪府出身で奈良市の奈良県物産陳列所(現・仏教美術資料研究センター)建設の際、現場監督を務めた人物です。明治35年より奈良県技師として活躍。旧高市郡教育博物館、旧奈良県公会堂(現存せず)を設計。旧高市郡教育博物館は現在、橿原市今井町の今井まちなみ交流センター華甍(はないらか)として活用されています。この2つの建物は平等院鳳凰堂を模して設計され、復古的な意匠をあらわす建物として大変貴重です。

旧奈良県立図書館 DATA

住所大和郡山市城内町2-7
アクセス近鉄大和郡山駅から徒歩約15分
建造年明治41年(1908)
一般公開外観見学自由、内部見学は要問い合わせ
入館料無料
問い合わせ0743-53-1151(大和郡山市教育委員会、学科指導教室「ASU」)
関連サイト大和郡山市教育委員会・学科指導教室「ASU」
http://asu-universe.blogspot.jp

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