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近代化遺産ある記

vol.22 仏教美術資料研究センター(旧奈良県物産陳列所)

掲載日:2016年4月15日

重要文化財

若い意欲あふれる近代和風建築の傑作

奈良国立博物館仏教美術資料研究センターは、仏教を中心とした歴史と美術に関する学術資料を作成・収集・整理保管し、公開する施設です。所蔵資料は一般の利用も可能なのですが、建物にもご注目。明治中期を代表する近代和風建築なんです。小屋組みや壁などには西洋建築の技術が使われていますが、外観は和風を基調とし、春日大社の参道沿いにあって景観と調和しています。

当初、この建物は県下の殖産興業と物産の展示販売を行う旧奈良県物産陳列所として、明治35年(1902)に竣工、開館しました。奈良県商品陳列所、奈良県商工館と名を変え、昭和26年(1951)に県から国に移管、奈良国立文化財研究所の春日野庁舎として利用されます。昭和58年(1983)に建物が重要文化財に指定されたのち、奈良国立博物館へ管理が移り、平成元年(1989)に仏教美術資料研究センターとして開館、現在に至ります。内部は何度か改修されましたが、外観はほぼ竣工当時のまま残されています。

チェックポイント!

伝統的な意匠があちこちに

古社寺を参考にしています

建物の細部のデザインには、飛鳥時代から鎌倉時代にかけての建築からの引用が随所に見られます。たとえば中央楼欄下の人字形割束(にんじけいわりづか)は、法隆寺金堂・中門に由来。設計者の関野貞は、奈良県技師として古社寺建造物の調査と保存に従事していました。古建築のスケッチも多数残されており、在任中に蓄積した知見が生かされています。

どこかで見覚えありませんか

研究成果をいかんなく発揮

中央楼から東西へ廊が延びた左右対称の姿は、宇治の平等院鳳凰堂に似ているような…。それもそのはず、関野は帝大在学中の明治27年(1894)、修学旅行で鳳凰堂を25日間かけて実測調査しています。翌年発表した自身初の論文も鳳凰堂に関するもので、設計の際のイメージソースとなったと考えられています。お手持ちの10円玉に描かれた鳳凰堂と比べて、違いを楽しんでみてはいかがでしょう。

華やかなイスラム風の窓

和、西洋、オリエントの建築様式が融合

旧奈良県物産陳列所のもう1つの特徴は、イスラム風の窓です。八弁花を象った円形の窓や、半円形に花弁状の切り込みを入れた飾り窓など、異国情緒の漂うデザインながら、端々に見える西洋風の意匠や、建物全体の和風のトーンとも見事になじんでいます。そのデザインの融合は、東西文明交流の道シルクロードの終着点である奈良を表現しているかのようです。

 建てたのはこんな人!

関野貞(せきのただし)

慶応3年(1867)生まれ。帝国大学工科大学造家学科(建築学科)卒業後、奈良県技師として古社寺建造物の調査・修理に尽力しました。また、奈良ホテルの設計者である辰野金吾の指揮のもと、日本銀行の工事にも参加しています。旧奈良県物産陳列所の設計は、新薬師寺本堂や法起寺三重塔などの修理を監督していた明治30年(1897)から32年(1899)の間になされました。依頼を受けたとき、関野はまだ30歳という若さでした。

仏教美術資料研究センター(旧奈良県物産陳列所) DATA

住所奈良市登大路町50
アクセス近鉄奈良駅から徒歩約20分、またはJR・近鉄奈良駅から市内循環バスで約7分、大仏殿春日大社前下車、徒歩約1分
建造年明治35年(1902)
一般公開水・金曜の9:30~16:30(複写は16:00まで)
祝休日、12月26日~1月4日は休館。
問い合わせ0742-94-5121(センター)、050-5542-8600(ハローダイアル)

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