西ノ京
掲載日:2008年10月1日
奈良市街から南西へ約3km。西ノ京はいまもゆるやかな時の流れる町。奈良時代に築かれた2つの大寺がどっしりと甍(いらか)を連ね、築地塀(ついじべい)が残る狭い路地には「古都」が確かに息づいている。写真家たちも愛した風景に、歴史と伝統を訪ねて―。
南都銀行西ノ京支店のオススメ
世界遺産の古寺と伝統に親しむ
近鉄橿原線西ノ京駅から徒歩2分、薬師寺の塔を望む昔からの静かな住宅地に、南都銀行西ノ京支店はあります。薬師寺と唐招提寺、2つの世界遺産に囲まれた西ノ京支店のオススメは、まずこの2大寺巡りです。
西ノ京駅を降りてすぐ、駅前の道路を東に進むと最初に目に入ってくるのが薬師寺です。道路南側の白鳳伽藍では、金堂の薬師三尊像(国宝)、大講堂の弥勒三尊像(みろくさんぞんぞう)(重文)、東院堂の聖観世音菩薩像(しょうかんぜおんぼさつぞう)(国宝)などの御仏(みほとけ)たちに出会えます。薬師寺のシンボルでもある東塔(国宝)・西塔の、2つの三重塔も見逃せません。「凍れる音楽」とも評された東塔は、境内で間近に見上げるのはもちろんのこと、少し離れた場所から見渡すのもいいものです。オススメは近鉄線の西側にある大池(勝間田池)からの眺め。若草山を背景に朝日や夕日に照らされる池越しの双塔は、西ノ京ならではのオススメの一景です。
3月末~4月初めの花会式(はなえしき)や、5月初めの最勝会(さいしょうえ)、玄奘三蔵会大祭(げんじょうさんぞうえたいさい)など、1年を通じて多くの行事が行われる薬師寺ですが、10月8日の夕刻からは、薬師寺創建を発願した天武天皇の遺徳を偲ぶ天武忌が催されます。大講堂で営まれる法要と同時に行われる万燈会(まんとうえ)は、白鳳伽藍を無数の燈籠が埋めつくす幻想的な行事です。読経の声と虫の音だけが響く西ノ京の静かな秋の夜に橙色の燈火がまたたくさまは、萩の咲き乱れる昼間の境内とは、また一味違う情緒あふれる風景です。
この薬師寺から築地塀の風情ある道を北へ700mほど行くと、もう一つの世界遺産、唐招提寺が正面に見えてきます。視力を失いながらも6回目の渡航によってようやく来日を果たし、数多くの人々に戒を授けた鑑真大和上。来日後、最初の5年を東大寺で、残りの5年をこの唐招提寺で過ごしました。御影堂(みえいどう)に祀られる鑑真和上像の穏やかで、しかし深い悲しみをたたえたような表情は、一度見たら忘れられないものでしょう(毎年6月初め特別公開)。
唐招提寺と言えば、井上靖の小説にも知られる「天平の甍(いらか)」。天平建築の代表である金堂(国宝)は、現在平成の大修理中ですが、今夏ようやくその姿を現し、落慶に向けもう一息です。白く続く塀と大きな松の木が目を引く南大門、そこから見た金堂は、まさに唐招提寺を象徴する風景です。その甍の広がり、曲線の美しさ、天平の美の感性を味わいにぜひ足を運ばれてはいかがでしょう。
ところで西ノ京にはかつて天皇の離宮が置かれたことがありました。西ノ京駅から西へ600mほどのところにある瑠璃宮跡(るりきゅうあと)です。聖武天皇の娘である孝謙天皇の離宮で、薬師瑠璃光(るりこう)如来を本尊とする薬師寺にちなみ、「瑠璃宮」と名づけられました。日ごろは平城宮に住まわれた天皇でしたが、時折この離宮にこられては、文物に親しみながら静かな時間を過ごされたようです。平安京に遷都してからはすっかり廃墟となりましたが、昭和の30年代に宅地開発の際に、あたりは「離宮ヶ丘町」と名づけられ、かつて天皇の離宮があったことをその名に偲ばせています。現在は住宅地の中にひっそりと石碑が建つ、まさにオススメの隠れた歴史スポットです。
薬師寺、唐招提寺から瑠璃宮跡と、自転車で回るのもまたオススメです。歴史の重みを感じる築地塀の道をゆっくりと走るのもいいですし、平城宮跡から法隆寺のある斑鳩町まで続く「奈良自転車道」に沿ってのサイクリングもオススメです。秋篠川沿いに、春の桜、夏の青葉、秋の紅葉を楽しみつつ西ノ京を縦断する自転車道は、車が通れない自転車専用道路なのでどれだけのんびり走っても安心。田んぼの広がるのどかな景色の向こうに、唐招提寺の森や薬師寺の塔が見え隠れし、古き良き古都の風景を満喫できることでしょう。
少し遠出すれば、奈良の名産・赤膚焼の窯元もあります。かわいらしい奈良絵の描かれた焼き物は、旅の思い出にもお土産にもぴったりです。駅の西側には「がんこ一徹長屋」もあり、赤膚焼や墨など、古都の伝統文化に親しむこともできます。古寺がたたずみ、伝統文化の息づくのどかな時の流れる町、西ノ京。ぜひ一度訪ねてみてはいかがですか。